従業員25人の菓子製造会社で、包装ラインの機械が15年目を迎えました。
入れ替えに400万円。調べてみると、大分市に「上限150万円」の設備投資補助金があるといいます。
この制度は、使える会社にとってはかなり手厚い内容です。
ただし申請にたどり着く前に、4つの関門があります。
この記事では、まず自社が対象かどうかを判定していただき、対象外だった場合の行き先までお示しします。
「読んだけれど使えなかった」で終わらせないための記事です。
大分市中小企業者設備投資補助金とは

通常枠150万円、脱炭素枠300万円
令和8年度の制度の骨格は次のとおりです。
| 項目 | 通常枠 | 脱炭素化促進枠 |
|---|---|---|
| 補助率 | 1/2 | 1/2 |
| 上限額 | 150万円 | 300万円 |
| 対象 | 生産工程に必要な機械装置・建物附属設備 | 国が指定する省エネ設備のうち生産工程に必要なもの |
脱炭素化促進枠は、初めて交付決定を受けた年度を含む3年間のみ利用できます。
締切日はありません。でも「予算がなくなったら終わり」です
申請の受付期間は令和8年5月1日から、予算上限に達するまでです。
締切日の設定はありません。
ただしこれは「いつでも申請できる」という意味ではありません。
パンフレットには「審査会を開催し、事業計画書や申請書類の内容を基にして、予算範囲内で採択企業を決定します」とあります。
先着順で自動的に通るわけではなく、予算の枠内で審査があるということです。
残額は市のページに公表されていません。
検討されている方は、まず市(創業経営支援課 097-537-7014)に受付状況をお尋ねください。
申請の前に4つの関門で判定してください
ここが本題です。順番に確かめてください。
関門1:小規模企業者に該当しないこと
最も多くの方がここで外れます。
この補助金は「中小企業者」向けですが、そのうち小規模企業者は対象外と明記されています。
小規模企業者の定義は中小企業基本法第2条第5項によります。
| 業種 | 小規模企業者=対象外 | 対象になる規模 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 従業員20人以下 | 21人以上 |
| 卸売業・小売業・サービス業 | 従業員5人以下 | 6人以上 |
つまり、従業員3人の生花店も、5人の美容室も対象外です。食品製造業でも、20人以下なら対象になりません。
なお宿泊業・娯楽業については、別の法律の政令で「20人以下を小規模企業とする」特例がありますが、この補助金の運用でどう扱われるかは確認が取れていません。
宿泊業で従業員6〜20人という方は、市にお問い合わせください。
パート・家族従業員・役員を従業員数にどう数えるかも、あわせて確認されることをおすすめします。
関門2:生産・加工の工程に使う設備か
パンフレットの表紙に、はっきりと「※生産事業の工程上必要な設備に限ります」と書かれています。
対象は「市内の工場等の内部設備」で、区分は次の2つです。
- 機械及び装置:生産・加工の工程上必要な製造設備、モーター、ポンプ類などの汎用機械、各種産業用機械
- 建物附属設備:動力用電気設備、製品の洗浄・冷却用の給排水設備、加熱用ガス設備、ボイラー設備、受変電設備など
小売業や美容業は、業態として「生産・加工の工程」に当てはまりにくい制度設計です。
飲食業の厨房設備や宿泊業の設備が該当するかどうかは、個別の判断になります。
従業員8人のレストランで業務用食洗機を入れたい、という場合、関門1(サービス業6人以上)は満たしますが、関門2は市の判断を仰ぐことになります。
関門3:過去3年以内に受け取っていないこと
通常枠は、この補助金の交付を受けた年度の翌年度から3年間は申請できません。
市の応援メニュー一覧にも、令和5〜7年度に交付を受けた事業者は今年度の通常枠に申請できない旨が示されています。
脱炭素化促進枠は別扱いですので、過去に通常枠を使った方もこちらは検討の余地があります。
関門4:2027年3月31日までに支払いまで終えられるか
見落とされやすいのがこれです。
締切日がない代わりに、出口に期限があります。
パンフレットによると、対象になるのは「補助金交付決定後、売買契約の上、設備が稼働し、操業を開始し、かつ令和9年3月31日までに補助対象経費が支払われるもの」です。
そして交付決定までの流れはこうです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 申請した月 | 交付申請書を提出 |
| 翌月 | 審査会 |
| 翌々月上旬ごろ | 交付決定通知 |
| その後 | 売買契約 → 納品・設置 → 稼働・操業開始 → 支払い |
11月に申請すると、交付決定は1月上旬ごろ。
そこから契約・納品・設置・稼働・支払いまでを3月末までに終える必要があります。
納期の長い機械は、今からでは間に合わない可能性があります。
なお市の公式ページには「令和8年3月31日まで」という旧年度のままと思われる表記が残っています。
年度をまたぐ重要な条件ですので、申請前に市へご確認ください。
自分が対象かどうかをざっと確かめたい方は、10項目でその場にチェックできる診断をご用意しています。
対象になるもの・ならないもの

対象外の経費は思っているより広いです
市のページに明記されている対象外を挙げます。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 生産工程上不要なもの | パソコン、プリンタ、デジタル複合機、カメラ、エアコン、LED照明器具 |
| 契約形態 | リース料・レンタル料 |
| 車両 | 車輌、重機(大型特殊自動車等の土木建設機械を含む) |
| 工事 | 工場の解体、既存設備等の撤去・処分 |
| その他 | 事務に要する費用、消費税相当額 |
| 時期 | 交付決定前に契約・購入したもの |
| 重複 | 国・県その他から同様の趣旨の補助金を受けている場合 |
「工場に新しいエアコンを」「事務所のパソコンを入れ替えたい」というご相談をよくいただきますが、いずれも対象外です。
レジや予約システムといったITツールも、この制度ではありません。
そちらは大分市近郊の経営者必見!地元のIT支援策や補助金を賢く活用する方法をご覧ください。
ソフトウェアは「新規の生産管理システム」だけ
ソフトウェアは原則として対象外ですが、例外があります。
市のページには、生産管理システムを新規に導入し、生産効率の向上やエネルギー利用の効率化を証明できる場合は対象になりうる、とあります。
要綱上は「市長が認めるもの」という書き方です。
更新・バージョンアップは対象外です。
ここは判断が分かれるところなので、該当しそうな場合は事前に相談してください。
申請の進め方と見落としやすい3つのルール
申請前の事前連絡は「必須」です
パンフレットの手続きの流れに、「必ず大分市創業経営支援課に連絡し、対象設備や要件等について確認してください」と書かれています。
これは親切な案内ではなく、手順の一部です。
関門2のように個別判断が必要な部分が多い制度なので、ここを飛ばすと書類を揃えてから差し戻されることになります。
見積は市内2社以上。中古品はメーカーの新品見積も
- 新品:原則として市内事業者2社以上の見積書。取得できない場合は「見積りに係る理由書」(取扱事業者が限られる、特殊技術が必要など)
- 中古品:中古品取扱業者1社+メーカーの新品販売価格の見積書。中古業者が市外なら理由書が必要
見積書・請求書・領収書の発行元(事業所名・代表者名・所在地)は揃えておいてください。
なお中古機械の耐用年数や取得価額の条件は、公表資料では確認できませんでした。
中古を検討される場合は事前にご相談を。
なお、見積を取ること自体は交付決定前で構いません。
してはいけないのは契約と購入です。
この「交付決定前に発注してはいけない」という考え方は、レジは今買っても補助対象になります【消費税減税・事前着手制度】でも扱った論点と同じです。
交付後5年は売れない、3年は報告が続く
これも知っておいてください。
- 財産処分の制限:補助を受けた設備の移転・譲渡・売却・交換・貸付・目的外使用は、交付決定年度の終了後5年間できません(要綱第17条)。帳簿類の保存も5年
- モニタリング:交付の翌年度以降3年間、決算報告書・設備写真・成果報告書の提出が続きます
補助金を受け取って終わりではありません。
設備を5年使い続ける前提で、投資判断をしてください。
判断の考え方は投資対効果はどう考える?小規模事業者がIT投資で損をしないための基準でも整理しています。
対象外だった方へ
関門1で外れた方——つまり小規模企業者の方が、実際には多いはずです。
行き先を2つお示しします。
今年度なら持続化補助金(12月4日が実質の締切)
小規模事業者が今年度中に使えるものとして、小規模事業者持続化補助金 第20回があります。
設備投資にも使えます。
注意点は、申請締切(2026年12月15日)の前に商工会議所・商工会が発行する様式4の受付締切が2026年12月4日にあることです。
ここを逃すと申請できません。
詳しくは持続化補助金、申請締切の11日前に「もう一つの締切」がありますをご覧ください。
来年度は市の小規模事業者向け補助金
大分市には小規模事業者向けの「小規模事業者競争力強化支援事業補助金」がありますが、令和8年度は前期・後期とも受付が終了しています(後期の申請は2026年10月23日まででした)。
来年度に向けて準備されるなら、エントリーという前段の手続きがあることを先に知っておいてください。
大分市の補助金、申請だけでは使えません。「エントリー」という関門で解説しています。
例年4月ごろに前期のエントリーが始まります。
まとめ
大分市中小企業者設備投資補助金について、押さえていただきたいのは3点です。
- 小規模企業者(製造業等20人以下、小売・サービス業5人以下)は対象外。ここで多くの事業者が外れます
- 対象は生産・加工の工程に使う設備。パソコン・エアコン・LED・リース・車両は対象外
- 締切日はないが、2027年3月31日までに支払いまで終える必要がある。交付決定まで約2か月かかるため、納期の長い機械は逆算を
本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。
補助金の内容は年度や予算の状況によって変更されますので、最新の情報は必ず大分市の公式ページでご確認ください。
対象になるかどうかの個別判断も、市の創業経営支援課が窓口です。
「自社は対象になりそうか」「どの制度を狙うべきか」を、市への事前連絡の前に整理しておきたい方へ。
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