「大分市 補助金」で検索して、市のページにたどり着く。
補助率3分の2、上限40万円。
POSレジもホームページも対象になりそうだ——そう思って読み進めると、こう書かれています。
「エントリー期間 8月3日〜8月17日(受付終了)」
その少し下には「申請受付期間 9月28日〜10月23日」とある。
受付はこれから始まるのに、なぜもう終わっているのか。
大分市の小規模事業者競争力強化支援事業補助金は、申請の前に「エントリー」という関門がある二段構えの制度です。
エントリーを逃すと、その回は申請そのものができません。
この記事では、すでにエントリーを済ませた方が10月23日までにやるべきことと、乗り遅れた方が次の機会を確実に取るための備えを、分けて整理します。
大分市の小規模事業者向け補助金は「二段構え」

まず制度の形を押さえます。
補助率と上限額は枠によって違います。
| 枠 | 補助率 | 上限額 | 対象経費 |
|---|---|---|---|
| DX推進枠 | 3分の2 | 40万円 | ソフトウェア導入費/機器導入費/DX広報費/ウェブサイト構築費 |
| 一般枠 | 2分の1 | 30万円 | 機械装置等購入費/広報費/旅費/開発費/借料/委託・外注費 |
対象になるのは市内に事業所を持つ小規模事業者です。
常時使用する従業員の数が、卸売業・小売業・サービス業(宿泊業と娯楽業を除く)は5人以下、製造業その他および宿泊業・娯楽業は20人以下。
個人事業主も対象です。
エントリー → 抽選 → 申請、という流れ
この補助金が他と違うのは、申請書を出す前に「エントリーシート」を提出する必要がある点です。
- エントリーシートを提出する(年2回、それぞれ2週間程度)
- エントリーが予定数を上回った場合は抽選が行われる
- 抽選結果とあわせて申請順位と申請できる日程が通知される
- 割り当てられた期間に、窓口へ持参して申請する
エントリーは1事業者につき、DX推進枠か一般枠のどちらか1枠1回のみです。
期間が終わったあとの枠の移動はできません。
ここで見落としやすいのが3番です。申請できる期間は市から割り当てられます。
「10月23日までのどこかで都合のいい日に行けばいい」わけではありません。
申請は原則として事業主本人が事前に予約して来庁し、書類が全部揃っていなければ受け付けてもらえません。
なお抽選について、手引きには「抽選会場への入場、見学の有無は順位には影響しません」と明記されています。
会場に足を運んでも結果は変わらないということです。
後期は今どの段階か
令和8年度後期の日程は次のとおりです。
| 段階 | 日程 |
|---|---|
| エントリー期間 | 2026年8月3日(月)〜8月17日(月)終了 |
| 抽選会 | 2026年9月4日(金) |
| 申請受付期間 | 2026年9月28日(月)〜10月23日(金) |
つまり今動いているのは、8月にエントリーして抽選を通った事業者だけが進む申請の段階です。
ご自身にエントリー番号と申請順位の通知が届いているかどうかが、最初の分かれ目になります。
【エントリー済みの方へ】10月23日までに申請を仕上げる
通知が届いている方は、ここからが本番です。
審査で見られる4つの観点
手引きに示されている審査の観点は次の4点です。
- 新たな顧客の開拓や業務効率化を進めていけるものか
- 小規模事業者にとって実現可能なものか
- 小規模事業者ならではの創意工夫があるか
- 自社の製品やサービスの強みを適切に把握しているか
事業計画書を書くとき、この4つに一つずつ答えているかを確認してください。
特に3番目と4番目は、設備の性能を並べただけでは答えになりません。
「なぜ自店にこれが必要なのか」を、自店の強みと客層から説明する必要があります。
なお点数化された配点や加点項目は公表されていません。
「これを書けば何点」という攻略法はない、という前提で臨むのが正しい構えです。
ここで落ちる — 見落としやすい対象経費の条件
金額や枠は合っているのに、経費の中身で対象外になるケースが目立ちます。
実務で特に事故が多いのが次の3つです。
ウェブサイト構築費は単独では申請できません。
DX推進枠の4つの経費のうち、ウェブサイト構築費は「1〜3(ソフトウェア導入費・機器導入費・DX広報費)との併用で利用可能」とされています。
ホームページのリニューアルだけを考えていた方は、予約システムなど他の経費と組み合わせる必要があります。
DX広報費は「補助事業期間内に消費者に届く」ことが条件です。
手引きには、補助事業期間中に経費を支出していても、実際に広報がなされる——情報が伝達され消費者等に認知される——のが期間終了後になる場合は補助対象にならない、と明記されています。
期間中に動画を撮影し、公開は期間後、という段取りでは対象外です。
求人広告や、年間を通じて計画している広告の一部を切り出したものも対象になりません。
コンサルティング・アドバイス費用は対象外です。
補助対象外経費の一覧に明記されています(インボイス制度対応のための専門家への相談費用のみ例外)。
一方で、専門家を招へいする場合のその専門家に係る旅費は一般枠の旅費に含まれます。
なお実績報告関係書類の確認シートには「専門家にかかる謝金」という行が残っていますが、一般枠の対象経費6区分に謝金はありません。
ここは混乱しやすいので、判断に迷ったら申請前に商工労政課へ確認してください。
対象になるかどうかで判断が分かれる経費は、見積を取る前に整理しておくのが安全です。
判断に迷う経費がある場合は、申請前にご相談ください。
【エントリーしていなかった方へ】次の機会を逃さないために
今回は申請できません。
ただ、次の機会に向けて知っておく価値のある数字があります。
抽選の実数で見る「エントリーすれば通るのか」
市が公表している抽選結果から、令和8年度の実数を整理しました。
| 一般枠 | DX推進枠 | |
|---|---|---|
| 前期 エントリー数 | 78件 | 90件 |
| 前期 当選 / 補欠 / 落選 | 68 / 10 / 0 | 78 / 12 / 0 |
| 後期 エントリー数 | 37件 | 58件 |
| 後期 当選 / 補欠 / 落選 | 20 / 11 / 6 | 30 / 17 / 11 |
読み取れることは明確です。前期は落選者がゼロでした。
エントリーした全員が、当選または繰上げ待ちの補欠に入っています。
ところが後期は、当選が一般枠20件・DX推進枠30件に絞られ、落選が出ました。
当選率は5割強です。
エントリー数そのものは後期のほうが少ない(168件→95件)のに、当選枠がそれ以上に縮んでいます。
年度の予算が前期でかなり使われるためと考えるのが自然でしょう。
結論として、狙うべきは前期です。 後期に回すと、抽選という運の要素が一段重くなります。
なお補欠は取下げによる繰上げ待ちの区分です。
後期の場合、10月23日までに事務局から連絡があれば申請できますが、連絡がなければ申請できません。
例年の日程から逆算する
令和7年度・8年度とも、前期のエントリーは4月第1週に始まり2週間で締め切られています。
後期は8月第1週からの2週間です。
| 令和8年度 前期 | 令和8年度 後期 | |
|---|---|---|
| エントリー | 4月6日〜20日 | 8月3日〜17日 |
| 抽選会 | 5月8日 | 9月4日 |
| 申請受付 | 5月25日〜7月3日 | 9月28日〜10月23日 |
令和9年度の日程は未公表ですが、目安として3月中に「何に使うか」を決めておけば、4月のエントリーに間に合うということになります。
エントリーシート自体は申請書ほど重い書類ではありません。
取りこぼしの多くは、単に時期を知らなかったことによるものです。
去年の情報で準備すると事故になる6つのこと
令和8年度版の手引きで押さえておきたい点です。
補助率と上限額は変わっていませんが、経費の絞り込みと証憑(しょうひょう。支払いを証明する書類)の要件が厳しくなっています。
経費の絞り込み
- ウェブサイト構築費は単独申請不可(DX推進枠内の他の経費との併用のみ)
- 一般枠の機械装置等購入費でエアコンは対象外。パソコン・タブレット・複合機・防犯カメラなども汎用性が高いものとして対象外です
- コンサルティング・アドバイス費用は対象外(インボイス対応の相談費用を除く)
美容室の例で考えてみます。予約システムの導入とホームページの刷新をまとめて計画していた——この組み合わせは問題ありません。
予約システムがソフトウェア導入費に当たるため、ウェブサイト構築費を併用できます。
一方、パン屋さんがPOSレジと店内のエアコン入れ替えを同時に考えていた場合、エアコンは外して立て直す必要があります。
証憑要件の厳格化
- 既製品(ソフトウェアを含む)は、製造元や取扱代理店のホームページで価格・仕様・サービス内容を事務局が確認できるものに限る
- 税込30万円以上の見積は、市内事業者を含む2者以上から、同じ仕様・項目で取る必要があります。なお手引き本文は「30万円以上」、申請書類確認シートは「30万円を超える場合」と表記が揺れているため、30万円前後になるなら2者分を用意しておくのが安全です
- 小切手・手形・仮想通貨・ポイント・商品券による支払いは対象外。また旅費と店頭購入を除き、1取引10万円(税抜)を超える現金払いも対象外です
申請前に確認したいこと
手順としては、この順番で固めていくのが確実です。
- どちらの枠で出すか決める(エントリーの時点で確定しており、後から変更できません)
- 予定している経費が対象になるか確認する(対象外の条件が細かいので、ここに時間をかけます)
- 見積を取る(税込30万円以上なら市内事業者を含む2者以上)
- 事業計画書を書く(審査の4観点に答える形で)
お金の流れ — 全額立て替えが前提です
交付決定前の発注・契約・支出は対象外です。
決定を待たずに発注すると、その経費は一切対象になりません。
| 段階 | 目安 |
|---|---|
| 交付決定 | 申請から2か月以内(早まる場合あり) |
| 実績報告 | 事業完了後30日以内、かつ2027年2月26日(金)まで |
| 補助金の入金 | 交付請求書の受付日から3週間程度 |
つまり全額を自社で立て替えてから、あとで補助金が入る仕組みです。
40万円の補助でも支払いは先に満額発生します。
資金繰りを見てから計画してください。
他の補助金との併用
他の補助金との併用については、交付要綱に「本市又は国、県その他の機関から補助対象事業について他の補助金等を受ける場合は、補助の対象としない」とあり、手引きは「同一の補助事業(取組)について重複して他の補助金を受け取ることはできません」としています。
禁じられているのは同一の取組についての重複です。
別の取組であれば明示的な禁止規定は見当たりませんが、必ず双方の補助金事務局に事前確認をしてください。
まとめ
- 大分市の小規模事業者競争力強化支援事業補助金は、申請の前にエントリーが必要な二段構えの制度です。後期のエントリーは8月17日に終了しており、9月28日から始まったのはエントリー済みの事業者だけが進む申請受付です
- すでに通知が届いている方は、10月23日までに申請を。割り当てられた期間に窓口へ持参する必要があり、ウェブサイト構築費の単独申請不可、DX広報費の公開タイミング、コンサル費用の対象外といった条件で足をすくわれないよう、経費の中身を先に確認してください
- 乗り遅れた方は、次は前期を狙ってください。令和8年度は前期の落選がゼロ、後期は当選率5割強でした。3月中に使いみちを決めておけば、4月のエントリーに間に合います
制度の情報は年度によって変わります。
申請にあたっては必ず大分市の公式ページと最新の手引きをご確認ください。
お問い合わせは大分市商工労働観光部 商工労政課(本庁舎9階/TEL 097-537-7294)です。
当事務所では、補助金の枠選びから経費の対象判断、事業計画書の組み立てまでご相談をお受けしています。
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