「消費税が下がるらしいと聞いたけれど、うちのレジは大丈夫なんだろうか」
飲食店や小売店の経営者から、そんな声が出てきました。
税率が変われば、レジの設定を変えるか、機器そのものを入れ替えるかの判断が必要になります。
古いレジだと税率の設定変更ができない、ということも起こります。
補助金といえば「交付決定が出るまで発注してはいけない」が常識です。
決定を待たずに買えば1円も出ません。
これまで何度もお伝えしてきたことです。
ところが今回は、その常識がひっくり返ります。
デジタル化・AI導入補助金に設けられた「事前着手制度」は、2026年9月15日以降に導入したスマートレジやPOSレジの改修を、あとから申請できるという逆の設計です。
税率変更にレジの入れ替えが間に合うように、という趣旨です。
対象期間はすでに始まっています。
この記事では、現時点で分かっていることと、まだ公募要領を待つしかない部分を分けて整理します。

なぜ今、レジの話なのか
「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定され、令和9年4月より消費税率の引下げを行う方針が示されました。
ここは正確にお伝えします。まだ「方針が示された」段階であり、決定事項として扱うべきものではありません。
ただ、国は「制度変更を含め、様々な変化に対応していくためのシステム作りが喫緊の課題」としており、補助金の側はすでに動き出しています。
古いレジだと何が困るのか
税率が変わるとき、問題になるのは次のような点です。
- 税率の設定自体を変更できない機種がある
- 軽減税率と標準税率を分けて集計できない
- レシートの表示を変えられない
- メーカーのサポートが終了していて、改修を頼む相手がいない
税率変更への対応は、やるかやらないかを選べる話ではありません。
どのみち対応が必要なのであれば、補助が受けられる期間内に条件を守って進めるのが合理的です。
事前着手制度とは何か
事務局の案内は次のように説明しています。
令和9年4月より消費税率の引下げを行う方針が示された中で、経営の現場においてスマートレジの導入等が間に合うよう、9月15日以降、事前に補助対象となるスマートレジの導入やPOSレジの改修等を行い、事後に補助金申請ができる特例的な制度です。
通常の補助金とどう違うのか
| 通常の補助金 | 事前着手制度 | |
|---|---|---|
| 発注・契約のタイミング | 交付決定後でなければ対象外 | 2026年9月15日以降なら対象 |
| 申請のタイミング | 発注前に申請 | 導入後に申請 |
| 手元に必要なもの | 交付決定通知 | 契約・納品・支払いの全ての証憑 |
通常なら「決定を待ってから」が絶対の原則です。
この制度ではそれが逆になります。
ただし、だからこそ書類の保管が生命線になります。
後述します。
対象期間と申請スケジュール
| 項目 | 時期 |
|---|---|
| 対象期間 | 2026年9月15日 〜 2027年3月(調整中) |
| 申請受付期間 | 2027年1月 〜 2027年3月(調整中) |
事務局サイトの表現は「申請受付は2027年1月頃を予定しております」です。
いずれも確定日程ではありません。
2つの類型と、補助額の考え方
支援は2つの類型に分かれます。
今あるレジを買い替えるのか、改修して使い続けるのかで変わります。
| スマートレジ類型 | POSレジ類型 | |
|---|---|---|
| 考え方 | 従来型のレジからスマートレジを導入する | POSレジ等を改修して新税率に対応する |
| ソフトウェア | スマートレジシステムの購入費・クラウド利用料/受発注・請求書管理システムの改修費 | POSレジ・受発注・請求書管理等の改修費/POSレジシステムの購入費・クラウド利用料 |
| 役務 | 導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート | 同じ |
| ハードウェア | PC・タブレット購入費 〜20万円(補助率1/2) | レジ購入費 〜20万円(補助率1/2) |
なお「スマートレジ」とは、タブレットやスマートフォンなどの汎用端末にインストールして使うレジのことです。
従来型は締めや集計が手作業中心で売上は合計額しか分かりませんが、スマートレジはデータが自動集計され、商品別・時間帯別に売上が見えるようになります。
「機能の数」で上限が7倍変わります
ここが補助額を左右する最も重要な構造です。
| 区分 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1機能 | 〜50万円 |
| 2機能以上 | 〜350万円 |
補助率は段階的です。50万円以下の部分が3/4(小規模事業者は4/5)、50万円を超えて350万円までの部分が2/3。ハードウェアは20万円まで補助率1/2です。
ここでいう「機能」とは 「会計」「受発注」「決済」 を指します。
つまり、会計だけを入れるのか、受発注や決済まで含めて入れるのかで、上限が50万円と350万円に分かれます。
導入を会計だけに絞ると、上限が7分の1になるわけです。
事務局のチラシには、中小企業者は最大350万円(3/4補助)、小規模事業者は最大350万円(4/5補助)、中堅企業も一部対象、そして導入後のサービス・定着支援も最大2年間対象と記載されています。
導入したあと使われずに終わる、というのは補助金を使った設備投資でよく起きることです。
定着支援まで対象になるのは、実務上かなり意味があります。
判断に迷う段階でご相談いただけます。
今やるべき3つのこと
事前着手制度を使うなら、順番を守る必要があります。
① 事務局に登録された製品かを確認する
事務局の案内に、「レジの導入においては、あらかじめ事務局に登録されているスマートレジ・POSレジ等の製品が対象となります」と明記されています。
自己判断で家電量販店やネット通販で買うと、対象外になり得ます。
ここが最も事故が起きやすい箇所です。
検討している製品が登録されているかを、発注前に事務局またはベンダーに確認してください。
② 契約・納品・支払いの書類をすべて保管する
事後申請だからこそ、証憑が揃っていなければ申請できません。
事務局は「事後の申請のため、契約、納品及び支払いに関する全ての書類を保管ください」とし、例として仕様書・見積書・レシート等の取引を証明できる書類を挙げています。
レシート1枚でも欠けると、その経費が落ちる可能性があります。
ファイルを1つ作って、関係書類は全部そこに入れるくらいの運用にしてください。
③ 見積は複数取っておく
事務局の案内には、「申請要件を満たしている限り交付対象となりますが、改修費や役務費については、複数見積等が必要となる場合がありますのでご注意ください」とあります。
「必要となる場合がある」という書き方で、まだ確定していません。
後から必要だと分かっても遡れないので、取れるなら今のうちに取っておくのが安全です。
公募要領は、まだ公表されていません
ここは隠さずお伝えします。
スマートレジ類型・POSレジ類型の公募要領は、2026年10月5日時点で公表されていません。
事務局の案内も「後日、事務局より公募要領を公開しますので、詳細はそちらをご覧ください」とするのみです。
この記事の数値は事務局が公開したチラシ(2026年9月15日版)の記載にもとづいています。
分かっていることと、待つべきこと
| 分かっていること | 公募要領を待つべきこと |
|---|---|
| 対象期間の起点(9月15日以降) | 正確な申請受付日 |
| 2つの類型の区分 | 対象者の細かい要件 |
| 補助額・補助率の考え方 | 必要書類の一覧 |
| 登録製品が対象であること | 対象経費の詳細な範囲 |
| 証憑の保管が必要なこと | 賃上げ等の要件の有無、審査の方法 |
事務局自身が「変更となる可能性がありますので、申請にあたっては必ず公募要領をご確認ください」と述べています。
この記事の内容も、公募要領の公表によって変わり得ます。
発注の前に必ず最新の公募要領をご確認ください。
それでも今から動いたほうがよい理由
「公募要領が出てから考える」という判断もあり得ます。
ただ、待つことにも相応のリスクがあります。
- レジの入れ替えは機器が届いて終わりではありません。 商品マスタの登録、スタッフの習熟に時間がかかります。数百品目の登録を誰がいつやるのか、という話になります
- 税率変更が近づくほど、ベンダーが混み合います。 全国の店舗が一斉に動くため、見積から導入までの期間が延びます
- 対象期間には終わりがあります(2027年3月・調整中)。期間内に契約・納品・支払いを完了させる必要があります
今すぐ買いましょう、ということではありません。
税率対応はいずれ必要になる。
ならば対象期間内に条件を守って進めたほうがよい、という順序です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | デジタル化・AI導入補助金「事前着手制度」 (スマートレジ類型/POSレジ類型) |
| 何が特例か | 2026年9月15日以降の導入・改修を事後に申請できる |
| 対象期間 | 2026年9月15日〜2027年3月(調整中) |
| 申請受付 | 2027年1月頃を予定(調整中) |
| 補助上限額 | 1機能 〜50万円/2機能以上 〜350万円 |
| 補助率 | 50万円以下 3/4(小規模事業者 4/5) 50万円超〜350万円 2/3 ハードウェア 1/2(〜20万円) |
| 必須の注意 | ①登録製品のみ対象 ②契約・納品・支払いの全書類を保管 ③複数見積が必要になる場合あり |
| お問い合わせ | 中小企業デジタル化・AI導入支援事業 コールセンター 0570-666-376(IP電話等 050-3133-3272/平日9:30〜17:30) |
要点は3つです。
- 交付決定を待たずに導入したレジが、あとから申請できるという例外的な制度です。ただし9月15日以降の導入であることと、事務局に登録された製品であることが前提です
- 会計だけか、受発注や決済まで含めるかで上限が50万円と350万円に分かれます。 導入範囲を決める前にここを確認してください
- 公募要領はまだ公表されていません。 発注の前に必ず最新の公募要領をご確認ください
税率対応をきっかけにレジを「会計の道具」から「売上が見える仕組み」に変えられるかどうかは、導入の設計次第です。何をどこまで入れるかの整理からお手伝いできます。
大分で使える制度を目的別に整理したページもご用意しています。補助金・支援制度まとめ
※本記事は2026年10月5日時点の事務局の公表情報とチラシ(2026年9月15日版)にもとづいています。
制度の詳細はデジタル化・AI導入補助金の公式サイトで必ずご確認ください。
動画版では図解つきでさらに詳しく解説しています。
