パート5人を雇っている定食屋さん。
11月1日から全員の時給を1,096円以上にしなければなりません。
「何か補助金があるはずだ」と調べてみたら、よく名前の挙がる業務改善助成金は10月31日で締め切っていました。
正直にお伝えします。
11月以降、「最低賃金に合わせるための引き上げ」そのものを埋めてくれる制度は、大分ではほぼありません。
ただし、それを上回る賃上げをするなら使える制度はまだありますし、設備で原資をつくる道も残っています。
そして来年に向けた準備は、今日から始められます。
この記事では、今日の日付から見て何が使えるのかを期限の順に整理します。
大分県の最低賃金は11月1日から1,096円
61円・5.89%の引き上げ。県内すべての事業場が対象です
大分労働局の公表によると、大分県最低賃金は令和8年11月1日から時間額1,096円になります。
改定前は1,035円でしたので、引上額は61円です。
ひとつ、よくある誤解を先に正しておきます。
「大分市の最低賃金」というものは存在しません。
最低賃金は県単位で決まり、大分県内のすべての事業場・労働者に適用されます。
市町村ごとに違う額が設定されることはありません。
なお、一部の業種には地域別より高い特定(産業別)最低賃金が定められています。
製造業などで該当する業種の方は、大分労働局でご確認ください。
パート5人なら月いくら増えるか
自分ごとにしていただくために、試算してみます。
前提:時給1,050円のパート5人、1人あたり週20時間勤務、1か月を4.3週として計算します。
- 1人あたりの時給の上げ幅:1,096円 − 1,050円 = 46円
- 1人あたりの月額増:46円 × 20時間 × 4.3週 ≈ 約3,960円
- 5人分:約19,800円/月、年間では約24万円
社会保険料の事業主負担が増える分は含んでいません。
実際の負担はこれより大きくなります。
勤務時間や人数が違えば金額も変わりますので、ご自身の条件で計算してみてください。
期限の順番で並べるといま使えるのはこれだけ
一覧表
「今から新しく申請できるか」という目で見てください。
ここを区別している記事は、ほとんどありません。
| 制度 | 期限 | 今から新しく申請できるか |
|---|---|---|
| 国 業務改善助成金 | 2026年10月31日 | × 締切済み |
| 大分県 物価高騰対応業務改善奨励金 | 2027年3月15日 | △ 国に申請済みの人だけ |
| 大分市 賃上げ奨励金(前期) | 2026年11月30日 | ○ ただし最低賃金分は数えない |
| 大分市 賃上げ奨励金(後期) | 2026年12月1日〜2027年1月29日 | ○ 同上。前期と併用不可 |
| 小規模事業者持続化補助金 第20回 | 様式4:12月4日/申請:12月15日 | ○ 小規模事業者のみ |
| 大分県 自家消費型太陽光(賃上げ枠) | 2026年11月30日必着 | ○ ただし条件あり |
ご自身がどれに当てはまりそうか、10項目でその場に確認できます。
10月31日で締め切ったもの——国の業務改善助成金
設備投資をして事業場内の最低賃金を引き上げると、国が費用の一部を助成する制度です。
申請期限は地域別最低賃金の発効日の前日と定められており、大分では2026年10月31日でした。
助成率は事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、以上なら3/4。
上限は労働者数などにより最大600万円と、金額としてはかなり大きな制度です。
なお、この制度は予算の範囲内で実施されるため、10月31日より前に受付を終えている可能性もあります。
いずれにせよ、今から新規に申請することはできません。
制度の中身は最低賃金が上がる前に。設備投資で助成を受ける順番で詳しく解説しています。
来年に向けて読んでおく価値があります。
国に申請済みの人だけが使えるもの——県の上乗せ
大分県の「物価高騰対応業務改善奨励金」は、2027年3月15日までと期限が先です。
これを見て「まだ使える」と思われるかもしれませんが、違います。
この奨励金は、国の業務改善助成金の交付を受けた事業者への上乗せです。
県の要綱では、対象は「令和8年4月1日以降に国へ交付申請し令和9年3月15日までに国の交付額確定通知を受けた者」とされ、申請期間も「国の交付額確定通知日から令和9年3月15日まで」となっています。
つまり2027年3月15日はすでに国に申請した人が県に出すための期限であって、11月から新しく始められる制度ではありません。
国に申請済みの方には朗報です。
通常枠は自己負担分の2/3・上限140万円、重点枠は9/10・上限180万円。
社労士等への報酬も実費・上限10万円が対象です。
該当する方は大分県 雇用労働室(097-506-3351〜3354)へ。
知っておきたい「数えてもらえない賃上げ」

大分市の奨励金は最低賃金まで上げた分を数えません
11月以降も新しく申請できる数少ない制度が大分市中小企業等賃金引上げ奨励金です。
市内の事業者が対象で、前期は2026年11月30日まで延長されています。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。
市のページには、はっきりとこう書かれています。
「最低賃金までの増額は本事業における賃上げに含みませんのでご注意ください」
つまり、時給1,050円の方を1,096円にしても、その46円は「賃上げ」として数えてもらえません。
最低賃金に合わせるための引き上げは、制度上の賃上げではない、という考え方です。
数えてもらえるのは「その先」の引き上げです
では何が対象になるのか。1,096円を超えた部分です。
美容室でアシスタント2人を時給1,060円で雇っているとします。
11月から1,140円にすれば、1,096円を超えた44円分が賃上げとして数えられる可能性があります。
非正規従業員は時給20円以上の引き上げで1人1.5万円、40円以上で1人3万円です。
正規従業員は基本賃金を2.0%以上(定期昇給分を除く)引き上げた場合に1人5万円。
上限は1社あたり50万円、年度に1回だけです。
11月1日以降に申請する場合は、市のQ&Aの問25・問26を必ず確認してください。
最低賃金改定をまたぐ計算の扱いが、そこに書かれています。
非正規従業員の算定表も、3か月分の支給実績が11月1日の改定より前か後かでファイルが分かれています。
なお予算残額は148,895,000円(2026年10月29日時点)で、市のページで毎営業日更新されています。
先着順ですので、残額は申請前にご確認を。
前期と後期のどちらで出すべきか、3か月の支給実績要件をどう満たすかは、賃上げした分が戻ってくる。大分市の奨励金は11月30日まで延長されていますで詳しく扱っています。
設備投資とあわせて考えられる制度
持続化補助金の賃金引上げ特例(様式4は12月4日まで)
小規模事業者の方であれば、小規模事業者持続化補助金 第20回に賃金引上げの特例があります。
設備投資にも使えます。
注意点は、申請締切(2026年12月15日)の11日前に、商工会議所・商工会が発行する様式4の受付締切が12月4日にあることです。
持続化補助金、申請締切の11日前に「もう一つの締切」がありますをご覧ください。
太陽光を検討中なら——県の補助金に賃上げ枠があります
意外に知られていませんが、大分県の「自家消費型太陽光発電設備等導入事業費補助金」には賃上げ枠があり、通常枠25,000円/kWのところ35,000円/kWと単価が上がります。
申請期限は2026年11月30日必着、先着順です。
ただし条件が厳しめです。
申請者自身が「グリーン事業者」であるかグリーン事業者認証制度に申請中であることが必要で、交付決定前の着工もできません。
交付決定まで約5週間かかります。
賃上げ枠の具体的な要件は、県の交付要綱と手引きでご確認ください。
当方では確認できませんでした。
すでに太陽光の導入を検討されている方には検討価値がありますが、賃上げ対策として今から太陽光を始めるのは規模的にも日程的にも現実的ではないと思います。
税制と助成金は税理士・社労士へ
このほか、賃上げ促進税制(中小企業向け)やキャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースといった制度もあります。
ただしこれらは税務・労務の領域です。私は社会保険労務士ではありませんので、要件の解説はいたしません。
賃金規程の改定手続きを伴うものもありますので、顧問の税理士・社労士にご確認ください。
特にキャリアアップ助成金について「最低賃金への引き上げ分が対象になるか」は、大分労働局への確認が必要です。
来年の10月に慌てないために今からできること

来年度も同様の支援が続く見通しです
厚生労働省は令和9年度の概算要求で、業務改善助成金等の「賃上げ」支援助成金パッケージとして2,016億円を重点要求しています(2026年8月公表)。
ただしこれは要求の段階で、予算の成立や制度の中身はまだ決まっていません。
「来年も同じ制度がある」と当て込むのは危険ですが、何らかの支援は続く見通しと考えてよいでしょう。
「どの作業に何分かかっているか」を測り始める
来年の業務改善助成金に間に合わせるには、夏までに設備の目星をつけておく必要があります。
申請してから交付決定、そして導入・支払いまでの時間を考えると、10月に動き始めたのでは遅いのです。
今日から始められるのは、自分の店のどの作業に、誰が、何分かけているかを測ることです。
菓子工房で包装作業を手作業でやっているなら、1日何分かかっているか。それが自動包装機でどれだけ減るか。
この数字がないと、助成金の事業計画は書けません。
逆に数字さえあれば、公募が始まってから動いても間に合います。
設備投資の判断軸については投資対効果はどう考える?小規模事業者がIT投資で損をしないための基準で整理しています。
まとめ
2026年11月、大分の事業者が押さえておくべきことは3つです。
- 最低賃金は11月1日から1,096円(+61円)。県単位なので、大分市独自の額はありません
- 最低賃金に合わせる分そのものを埋める制度は、今からはほぼない。 国の業務改善助成金は10月31日で締切、県の上乗せは国に申請済みの人だけ、市の奨励金は最低賃金分を数えません
- 使えるのは「最低賃金を超えた賃上げ」と「設備投資」。市の奨励金(前期11月30日)、持続化補助金(様式4は12月4日)が現実的な選択肢です
厳しい内容になりましたが、使えない制度を探して時間を使うより、使えるものに集中していただきたいという趣旨です。
そして来年の10月に同じ思いをしないために、今から準備を始めてください。
本記事は2026年11月時点の情報にもとづいています。
補助金・助成金の内容は年度や時期によって変更されますので、最新の情報は必ず各機関の公式ページでご確認ください。
大分で使える制度を目的別に整理しています。
どの制度が自社に当てはまるか分からない方は、10項目でその場にチェックできます。