「内装工事はもう業者さんに頼みました。来月オープンなので」
創業のご相談でこう聞いたとき、使えたはずの補助金が使えなくなっていることがあります。
大分市には創業者応援事業補助金があります。
事業所の賃借料、改修費、法人登記の費用、ホームページ製作費に最大120万円。
女性・若者・シニアの方は補助率が3分の2です。
開業時の出費の中心をおさえた、使いやすい制度です。
ところが募集要領には、こう書かれています。
申請前に契約(事業所の賃貸借契約を除く)や発注した経費は補助対象経費となりません。
つまり内装工事やホームページを先に発注してしまうと、その分は対象外です。
賃貸借契約だけが例外で、こちらは申請日の前後に幅があります。
この記事では、制度の中身と、やるべき順序を整理します。
あわせて「特定創業支援等事業の証明書がないと申請できない」というよくある誤解も解いておきます。
まず制度の中身

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2分の1(女性・若者・シニアは3分の2) |
| 補助上限額 | 120万円(1,000円未満は切り捨て) |
| 支払方法 | 精算払い(先に自己負担で支払い、後から受け取る) |
| 申請受付 | 予算がなくなり次第終了 |
| 申込・問合せ | 大分市産業活性化プラザ(J:COMホルトホール大分2階)TEL 097-576-8879 |
| 制度所管 | 大分市 商工労働観光部 創業経営支援課 TEL 097-585-6029 |
「若者」は申請日時点で35歳未満、「シニア」は55歳以上です。
対象になる方
創業予定者または創業後5年未満の創業者で、大分市内に本店(法人)または主たる事業所と住所(個人事業主)を置く中小企業者が対象です。
一方で、対象外になるケースが細かく定められています。
- 他の者が行っていた事業を継承して行う事業(事業承継は対象外)
- フランチャイズ契約またはこれに類する契約に基づく事業
- 5年以上事業を営んでいる創業者の新事業・新分野への進出や事業転換、既に事業を営んでいる法人による新法人設立
- みなし大企業(大企業等から50%以上の出資)
- 風俗営業等の許可・届出を要する事業
- 社会福祉法人・医療法人・NPO法人・一般社団/財団法人・学校法人等(中小企業者の定義に当てはまらないため)
「創業」の定義が厳格です。
既存事業の延長は対象になりません。
事業所にも条件があります
補助対象は、大分市内で賃貸借契約を結んで新たな事業所を開設する事業です。
次の事業所は対象外です。
- 住居兼用になっている事業所(自宅の一部を店舗にする形はNG)
- 間借りの事業所(他の部分と明確に区切られていない、他人の専有部分を通らないと使えない物件)
- 仮設・臨時など恒常的な設置でない事業所
- 公的機関のインキュベーション施設等、入居期間に制限がある事業所
自宅開業を考えている方は、この制度の対象外になります。
本当の落とし穴は、契約のタイミングです
ここが記事の本題です。
賃貸借契約だけが例外
経費ごとに補助期間が違います。
| 補助対象項目 | 契約・発注のタイミング | 補助期間 |
|---|---|---|
| 事業所賃借料 | 申請日の6か月前〜3か月後までに契約 | 申請日または契約月の翌月1日(遅い方)から1年間 |
| 事業所改修費用 | 申請後に契約・発注 | 申請日から申請年度の3月31日まで |
| 法人登記等に係る経費 | 申請後に契約・発注 | 申請日から1年間 |
| 販売促進に係る経費 | 申請後に契約・発注 | 申請日から1年間 |
賃貸借契約は申請前に済ませていても構いません。
むしろ6か月前までなら遡って対象になります。
物件を決めてから申請する流れで問題ありません。
それ以外は逆です。 改修工事、法人登記、ホームページ——これらを申請前に契約・発注すると対象外になります。
なお「賃貸借契約月」とは契約を締結した日が属する月を指します。
賃貸期間の開始日や利用開始日ではありません。
申請時には見積書が必要です
発注する前に申請するということは、申請時点では見積書を出すことになります。
求められるのは次の条件を満たすものです。
- 明細書があること
- 消費税抜きの金額がわかるもの
- 実施年度別に金額がわかるもの
ここが実務上の要点です。
業者に「とりあえず一式で」という見積をもらっていると出し直しになります。
見積を依頼する段階で、明細と税抜金額、年度をまたぐ場合は年度別の内訳を頼んでください。
正しい順序
- 物件を決めて賃貸借契約を結ぶ(申請の6か月前〜3か月後の範囲内)
- 改修・ホームページ等の見積書を取る(明細・税抜・年度別)
- 補助金を申請する
- 採択・交付決定を待つ(採択結果は審査会開催日から概ね2〜3週間後に通知)
- 交付決定後に工事やホームページを発注する
開業日が決まっていると、この順序を守るのが難しくなります。
物件の目処がついた時点で補助金の相談を始めるのが現実的です。
順序の設計からご相談いただけます。
申請できるのは残り3回。10分のプレゼンもあります

ここまでが経費の話です。
もうひとつ、スケジュールの話をさせてください。
この補助金は、思い立ったときにいつでも出せるものではありません。
審査は月に1回。締めは毎月第3火曜です
申請期間は令和8年4月14日から12月15日までですが、審査は毎月1回です。
毎月第3火曜日までに申請を完了した分が、翌月上旬の審査会にかかります。
| 申請を完了する期限 | 審査会 | 採択結果の通知(目安) |
|---|---|---|
| 2026年10月20日(火) | 11月上旬 | 11月下旬ごろ |
| 2026年11月17日(火) | 12月上旬 | 12月下旬ごろ |
| 2026年12月15日(火) | 1月上旬 | 1月下旬ごろ |
申請期間の最終日である12月15日は、ちょうど12月の第3火曜日にあたります。
つまり残っている審査回は3回です。
しかも、この3回が確実にあるとは限りません。
申請の受付は予算がなくなり次第終了します。
予算上限に達すると、申請を完了していても審査会が開かれず不採択になる場合があります。
早い回に出すほど安全だという構造です。
工事を年内に始めたいなら、10月20日が実質の期限です
ここで、先ほどの「発注は交付決定後」という順序が効いてきます。
10月20日までに申請すると、審査会は11月上旬、通知は11月下旬ごろです。
内装工事やホームページの発注はそのあとですから、着工は12月に入ります。
ひとつ見送って11月17日の回にすると、通知は12月下旬、着工は年明けです。
内装工事が必要な業態、たとえばカフェや美容室、パン屋のように厨房や設備の工事が前提になる開業では、この1回の差が開業日を1か月動かします。
物件の賃貸借契約を先に結べる制度設計になっているのは、この待ち時間を見込んでいるからだと考えると納得しやすいかもしれません。
申請は「電話で予約して持参」です
郵送や電子申請ではありません。
先に大分市産業活性化プラザへ電話して申請日を予約し、その日に書類を持って行きます。
締め日の直前は予約が取りにくくなることが想定されます。
第3火曜日の当日に電話しても、その回には間に合いません。
締め日の2週間前には予約の電話を入れておくくらいの余裕を見てください。
申請時に約10分のプレゼンテーションがあります
これが見落とされやすい点です。
書類を提出して終わりではありません。
申請時に、申請者ご本人が相談員に対して事業内容のプレゼンテーション(約10分)を行います。
書類の不備で再提出になった場合は、2回目のプレゼンが不要なこともあります。
10分は、話し慣れていないと短く感じる長さです。
審査では次の6項目が評価されますから、この順に沿って話せる状態にしておくと噛み合います。
- 新規性(何が新しいのか)
- 競争優位性(近隣の同業と何が違うのか)
- 成長性・収益性(いつ黒字になるのか)
- 実現可能性・継続性(なぜあなたができるのか)
- 地域への貢献度(大分市にとって何が良いのか)
- 支援の必要性(なぜ補助が必要なのか)
事業計画書に書いた内容を、数字を含めて口頭で説明できるかどうかです。
「一番言いたいことを最初の1分に置く」だけでも伝わり方が変わります。
原稿を読み上げるのではなく、手元のメモを見ながら話せる程度まで準備しておくと安心です。
「証明書がないと申請できない」は誤解です
特定創業支援等事業の証明書について、よくある誤解を解いておきます。
申請時に証明書は要りません。 募集要領にはこう書かれています。
1回目の実績報告までに市から「特定創業支援等事業により支援を受けたことの証明書」の交付を受けてください。
証明書の取得には、市内支援機関で1か月以上の支援を受ける必要があるため、計画的な受講・相談をお願いします。
申請前に特定創業支援等事業を受けていなくても、申請は可能です。
つまり、これから受講する予定でも申請できます。
「証明書がまだないから今年は見送ろう」と判断する必要はありません。
ただし条件が2つあります。
- 取得には市内支援機関で1か月以上の支援を受ける必要があります。1回のセミナーで即日もらえるものではありません
- 1回目の実績報告までに間に合わせる必要があります。精算払いの仕組み上、1回目の実績報告は申請年度の年度末(3月)です
特定創業支援等事業とは、市と金融機関や商工会議所などが連携して、経営・財務・人材育成・販路開拓等の知識が身につく継続的な相談やセミナーを行うものです。
証明書を取得すると、この補助金以外にも国の優遇措置があります。
なお当事務所は大分市の創業支援事業者ではありません。
どの機関で受講できるかは、大分市の「創業支援等事業計画」をご確認いただくか、創業経営支援課へお問い合わせください。
審査で見られること、お金が入るまで
審査項目は公表されています
提出された事業計画書等について、外部の有識者等が次の観点で評価します。
- 新規性
- 競争優位性
- 成長性・収益性
- 実現可能性・継続性
- 地域への貢献度
- 支援の必要性
事業計画書を書くときは、この6項目に一つずつ答えているかを確認してください。
特に「地域への貢献度」と「支援の必要性」は、書き慣れていないと抜けやすい観点です。
精算払いなので、資金の準備が必要です
補助金は精算払いです。
対象経費を自分で支払ったあと、実績報告を経て受け取ります。
| 段階 | 時期 |
|---|---|
| 1回目の実績報告 | 申請年度の年度末(3月) |
| 2回目の実績報告 | 翌年度の事業完了日後 |
| 補助金の振込 | 交付請求から2週間程度 |
補助金が入るまでの資金は自分で用意する必要があります。
120万円の補助を受けるなら、240万円(補助率1/2の場合)を先に支払うことになります。
加えて注意点が2つあります。
予算上限に達した時点で申請受付が終了し、申請を完了していても審査会が実施されず不採択となる場合があります。
また現金支払いは対象外です(登録免許税の収入印紙を除く)。
銀行振込を使ってください。
消費税と振込手数料も対象外です。
対象経費の細かい線引き
最後に、間違いやすい線引きをまとめます。
| 項目 | 対象 | 対象外 |
|---|---|---|
| 事業所賃借料 | 月額賃料 | 敷金、礼金、駐車場費、光熱水費、共益費、仲介手数料 |
| 事業所改修費用 | 外装・内装・設備の工事費 | 備品(器具及び備品に該当するもの) |
| 販売促進費 | 広告掲載料、TV・ラジオCM、折込チラシ・ポスティング、ロゴマーク作成費、パンフレット・ポスター・チラシ | 名刺など汎用性のあるもの |
| ホームページ製作費 | 新規製作の委託費、既存ホームページの変更・更新の委託費 | パソコン等設備購入費、通信経費、維持管理費 |
ホームページは「既存の変更・更新」も対象です。新規製作に限りません。
すでにサイトを持っている方が開業に合わせて作り直す場合も使えます。
一方で備品は対象外です。
設備か備品かの判断は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令などを参考にするよう要領が示しています。
厨房の工事は入っても、持ち運べる調理器具は入りません。
見積の段階で市に確認するのが安全です。
また、事業所の所有者と補助事業者(法人の場合は代表者を含む)が同一人物・2親等以内の親族・法人とその役員の関係にある場合、事業所賃借料は対象外です。
親族の物件で開業する場合は注意してください。
まとめ
- 大分市創業者応援事業補助金は上限120万円、補助率2分の1(女性・35歳未満・55歳以上は3分の2)。賃借料・改修費・法人登記費用・ホームページ製作費が対象です
- 最大の落とし穴は契約のタイミングです。 申請前に契約・発注した経費は対象外で、賃貸借契約だけが例外(申請日の6か月前〜3か月後)。改修工事やホームページは交付決定後に発注してください
- 証明書は申請時に不要です。 特定創業支援等事業の証明書は1回目の実績報告までに取れば足り、申請前に受講していなくても申請できます。ただし取得には市内支援機関で1か月以上の支援が必要です
制度の内容は年度によって変わります。
申請にあたっては必ず大分市の公式ページで最新の募集要領をご確認ください。
申請の窓口は大分市産業活性化プラザ(TEL 097-576-8879)です。
開業時のホームページは、作ったあとどう使うかで成果が分かれます。
補助金で作る場合も、その点を先に決めておくことをおすすめします。
大分で使える制度を目的別に整理したページもご用意しています。

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