従業員8人の洋菓子店。
ネット注文の問い合わせ返信や、SNSの投稿文づくりに毎晩1時間取られている——「AIを使えば楽になるらしい。
でも、社員にどう教えればいいのか分からないし、研修にお金をかける余裕もない」。
大分市内の経営者から、こうしたご相談が増えています。
結論からお伝えします。
大分市内の中小企業なら、AI研修の費用の3分の2が補助される制度があります。
ただしそのためには、研修の内容が市の定める「DX研修」の条件を満たしている必要があります。
この記事では、大分でAI研修を受ける3つの方法と、補助率2/3になる条件、つまずきやすい注意点を順に整理します。
大分でAI研修を受ける3つの方法

公的機関の講座に社員を派遣する
県や公設の試験研究機関などが開く講座です。
受講料が抑えめなことが多い一方、日程や内容は主催者が決めるため、自社の業務に合わせた内容にはなりにくい面があります。
民間の研修機関の講座に参加する(外部研修)
研修を事業として行う民間の講座に社員を参加させる方法です。
テーマを選びやすく、1人から参加できるのが利点です。
講師を自社に呼んで研修を開く(自主研修)
講師を招き、自社の社員向けに研修を開く方法です。
自社の業務や実際の書類を題材にできるので、研修の翌日から使える内容にしやすいのが最大の強みです。
| 方法 | 向いている会社 | 自社業務への合わせやすさ |
|---|---|---|
| 公的機関の講座 | まず1〜2人に基礎を学ばせたい | 低い |
| 外部研修 | 特定の社員に専門テーマを学ばせたい | 中程度 |
| 自主研修 | 社員みんなで同じ使い方をそろえたい | 高い |
費用の2/3が補助される「人材育成応援事業」

大分市の「中小企業者経営力強化促進補助金」には4つのメニューがあり、研修費を補助するのが人材育成応援事業です。
上の3つの方法のうち、外部研修と自主研修が対象になります。
補助率と上限額
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 2分の1(DX研修は3分の2) |
| 上限 | 研修対象者1人あたり10万円(1事業者につき年度30万円まで) |
| 申請期間 | 令和8年4月1日〜令和9年3月31日(予算に達し次第終了) |
補助率とは、かかった費用のうち何割を補助してもらえるかのことです。
上限の30万円に達するまでは、同じ年度内に何回でも申請できます。
対象となる会社
市内に本社または支社がある法人(個人事業主は市内に住所と事業所があること)で、市内で1年以上事業を営んでいることなどが条件です。
市税の滞納がないこと、同じ研修で国や県の補助金を受けていないことも求められます。
制度の全体像は大分市 人材育成応援事業(令和8年度)完全ガイドで詳しく解説しています。
AI研修が「DX研修(補助率2/3)」になる条件
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。
条件は「デジタルスキル標準」に沿った内容であること
補助率が2/3になるDX研修について、大分市の募集要領は、『DXに関する専門的な技術・知識の習得を目的とし、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が定める「デジタルスキル標準」で定義された項目・スキルに関する内容のもの』、としています。
デジタルスキル標準とは、国がまとめた「DXの時代に働く人に必要な知識やスキルの一覧表」です。
全社員向けの「DXリテラシー標準」と、DXを推進する人材向けの「DX推進スキル標準」の2つで構成されています。
中小企業の社員研修で主に参照するのは、前者のDXリテラシー標準です。
こちらは「なぜDXが必要か」「DXで使われるデータや技術は何か」「それをどう業務に生かすか」、そして変化に向き合う姿勢、という4つの観点で整理されています。
生成AIの登場を受けて、その使い方や注意点も盛り込まれています。
つまり「AIのツールを触ってみる会」では足りず、国が定めたスキルの項目に沿って研修の中身を組み立てることが求められます。
同じ3時間のAI研修でも項目との対応が説明できるかどうかで、補助率が1/2になるか2/3になるかが分かれうる、ということです。
カリキュラムの組み立て方の例
中小企業のAI研修なら、たとえば次のような内容はデジタルスキル標準の項目に対応づけやすい領域です。
- 生成AIの仕組みと、業務で使うときの注意点
- データの読み方と、業務改善への生かし方
- 情報セキュリティと、AIに入力してはいけない情報
DX研修に該当するかどうかを最終的に判断するのは大分市です。
申請前に、カリキュラムを添えて市に相談するのが確実です。
当事務所の研修は、各コースをデジタルスキル標準の項目に沿って設計しています。
詳しくはDX・生成AI研修のご案内をご覧ください。
自主研修と外部研修、どちらで申請するか

外部研修の条件
- 休憩を除いた研修時間が6時間以上あること(時間割などで確認できる書類が必要)
- 受講証明書や修了証を発行できる研修であること
- 対象は、市内に勤務する常勤の役員・従業員(有期雇用の人は除く)
研修を行う側にも条件があります。
公的な研修機関や業界団体のほか、民間なら専門的な研修を事業として行っている団体・企業に限られ、公式ホームページ(SNSは不可)で研修の開催が明記されている必要があります。
eラーニングやオンデマンド配信は、視聴時間で判定されます。
講演会やフォーラム、研修機関が自社商品の販売促進のために開いているとみられるものは対象外です。
「無料のAI活用セミナー」の多くは講演会形式なので、外部研修として申請できないことが多い点に注意してください。
自主研修の条件
- 大分市内で、自ら企画・開催する研修であること
- 対象経費は会場借上料、講師謝礼やテキスト代などの研修費、講師の交通費・宿泊費、委託料
- パートや有期雇用の従業員も受講対象に含められる
オンラインで行う場合は、講師と受講者がその場でやりとりできる同時双方向型に限られます。
録画を配信するだけのものや、講演会・視察のみのものは対象外です。
自主研修の組み立て方は補助率2/3を使う「自主研修」の作り方でも解説しています。
費用の目安
以下は税抜・例示の試算です。
| 例 | 研修費 | 補助額(2/3) | 自己負担 |
|---|---|---|---|
| 社員10名で自主研修 | 30万円 | 20万円 | 10万円 |
| 社員10名で自主研修(上限到達) | 60万円 | 30万円 | 30万円 |
2つ目の例のように、1事業者あたり年度30万円の上限に達すると、それ以上は補助されません。
消費税と源泉徴収税も対象外です。
申請の流れとつまずきやすい注意点
申請から受け取りまでの流れ
- 市へ交付申請(研修の申込予定日の14日前まで。年末年始を除く)
- 市の審査を経て交付決定
- 交付決定の後に研修を申し込み、実施する
- 実績報告をして補助額が確定し、補助金を請求する
交付決定とは「この研修に補助金を出します」という正式な通知のことです。
補助金は精算払いなので、研修費はいったん全額を自社で支払います。
外部研修に限っては、受講後に申請する「事後申請」もできます。
つまずきやすい6つのポイント
- 交付決定の前に研修を申し込むと対象外になります
- 1取引10万円(税抜)を超える支払いを現金で行うと対象外です。振込などを使います
- 自社の関連会社や、役員の3親等以内の親族が経営する会社への委託は、原則対象外です
- 前年度に申し込んだ研修は対象外です
- 同じ研修で国の助成金を使う場合は、市の補助金は使えません。どちらを使うか事前に決めておきます
- 研修の内容は、登記簿や開業届に書かれている自社の業務に必要なものに限られます。業務とのつながりが説明しにくい内容は、対象外になるおそれがあります
自主研修を外部に委託する場合は、委託先が研修を本業としていること(なりわい)を示すため、事業内容が分かるホームページの画面などの提出も求められます。
依頼先を選ぶ段階で確認しておくと、申請がスムーズです。
まとめ
- 大分でAI研修を受ける方法は、公的機関・外部研修・自主研修の3つ。自社の業務に合わせるなら自主研修が向いています
- 大分市の人材育成応援事業では、デジタルスキル標準に沿った「DX研修」なら補助率が2/3になります
- 交付決定前の申込み、10万円超の現金払い、国の助成金との重複に注意が必要です
AI研修は受けて終わりではなく、社内で使い方をそろえ、日々の業務に定着させてこそ効果が出ます。
当事務所では、研修の実施と補助金の申請書類づくりを一貫してお手伝いしています。
予算に達し次第締め切られる制度ですので、ご検討中の方はお早めにご相談ください。
申請前の疑問に無料でお答えします。
※本記事は2026年9月時点の大分市の募集要領にもとづいています。
補助率・上限・要件は年度により変わることがあります。
申請前に必ず大分市の公式ページで最新情報をご確認ください。