「いまだにFAXで注文を受けている」「取引先がFAXしか使ってくれない」——日本の中小企業では、いまだにFAXが現役で使われている場面が多くあります。
FAXには「紙が出てくるまで届いたか確認できない」「文字が薄くて読みにくい」「保管・整理に手間がかかる」といった課題がある一方、長年の取引先との関係や、相手の使い慣れた方法を尊重したいという事情もあり、簡単にはやめられません。
この記事では、取引先に配慮しながら、FAXからデジタルへスムーズに移行する方法をお伝えします。
なぜFAXからの移行が難しいのか

「相手がいる」という特殊な事情
紙の書類のデジタル化(ペーパーレス化の基本はこちら)は、自社の判断だけで進められます。
しかし、FAXは取引先という「相手」がいるため、自社だけの都合で一方的にやめることができません。
「FAXをやめます」と一方的に伝えると、取引先によっては困惑したり、関係が悪化したりするリスクがあります。
高齢の取引先・小規模な取引先への配慮
特に、農家・個人商店・高齢の経営者が多い取引先では、FAXが最も使い慣れた、安心できる連絡手段であることがあります。
デジタルへの移行を急かすことは、関係性を損なうリスクがあります。
スムーズに移行するための5つのステップ
ステップ1:まず自社内のFAX依存を減らす
取引先との関係を変える前に、まず自社内でFAXに依存している業務を見直しましょう。
- FAXで受け取った注文書を、その後どう処理しているか(手書きで転記?)
- FAXの内容を確認するまでにかかっている時間
- FAXの保管・整理にかかっている手間
自社内の業務フローを整理することで、「FAXそのものをやめる」のではなく「FAXを受け取った後の処理をデジタル化する」という、より実現しやすい第一歩が見えてきます。
たとえば: FAXで受け取った注文書をスキャンしてクラウドに保存し、検索しやすくするだけでも業務効率は大きく改善します。
ステップ2:「選択肢を増やす」という伝え方をする
取引先に対して「FAXをやめてください」と伝えるのではなく、「FAXに加えて、メールやLINEでの注文も受け付けられるようになりました」という伝え方をしましょう。
選択肢を増やすという伝え方であれば、取引先に負担を感じさせず、自然に移行を促せます。
デジタルに慣れた取引先は自発的にメールやLINEに切り替え、FAXに慣れた取引先はそのまま使い続けられます。
案内文の例:
いつもお世話になっております。このたび、ご注文方法にメール・LINEでの受付を追加いたしました。お使いやすい方法でご連絡いただけますと幸いです。もちろん、これまでのFAXでのご注文も従来どおり受け付けております。
ステップ3:メリットを具体的に伝える
デジタルへの移行を促す際は、取引先にとっての具体的なメリットを伝えましょう。
- 「メールなら、24時間いつでも注文を送れます」
- 「LINEなら、写真を添付して注文内容を伝えられます」
- 「確認の返信がすぐに届くので、注文が届いたか不安にならずに済みます」
「自社の都合」ではなく、「取引先にとっての便利さ」を中心に伝えることが、納得感を生みます。
ステップ4:移行が進んでいる取引先から少しずつ始める
すべての取引先に同時に働きかけるのではなく、デジタルに慣れている取引先から段階的に移行を進めましょう。
成功事例ができれば、「〇〇さんはメールに切り替えたらしい」という情報が業界内で自然に広まり、他の取引先も移行を検討しやすくなります。
ステップ5:どうしても難しい取引先には「橋渡し」の工夫をする
高齢の取引先など、デジタルへの移行が難しい相手には、FAXを使い続けてもらいながら、自社側でデジタル変換する仕組みを作りましょう。
- 受信したFAXを、複合機の機能で自動的にPDF化してメールに転送する設定にする
- スキャンしたFAXの内容を、AI-OCR(文字を読み取るAI技術)でテキストデータに変換する
「相手には変化を求めず、自社側で処理方法を変える」という工夫が、最も現実的な解決策になることもあります。
当事務所の無料セミナーでは、こうした取引先対応の工夫も含めたペーパーレス化の進め方を解説しています。
業種別・FAX移行の実践アイデア

食品製造・卸売業:FAXの注文書をAIでデータ化
取引先からのFAX注文書をスキャンし、AI-OCRで自動的にテキストデータに変換することで、手作業での転記の手間を削減できます。
受注管理システムと連携させれば、在庫管理まで自動化できる場合もあります。
飲食店:仕入れ先とのFAX発注をLINEに移行
毎日の食材発注をFAXで行っている飲食店では、「FAXに加えてLINEでも発注できます」と仕入れ先に提案することで、写真付きの発注(「これと同じものを」という指示も可能)ができるようになります。
美容室・サロン:ディーラーとのFAX注文をメールに移行
美容材料のディーラーとのやり取りがFAX中心の美容室では、注文用のExcelシートを作成し、メールで送付する形式に移行することで、注文履歴の管理がしやすくなります。
費用と手順の目安:何にいくらかかるのか
「デジタル移行」と聞くと大きな投資を想像されますが、FAX対応の改善は、費用をかけずにできる部分が大半です。
| 取り組み | 費用の目安 | 着手までの期間 |
|---|---|---|
| 複合機のFAX自動PDF化・メール転送設定 | 0円(今の機器の設定変更) | 即日〜数日 |
| インターネットFAX(電話回線を使わないFAX) | 月額1,000〜3,000円程度 | 1週間 |
| AI-OCRによる注文書の自動データ化 | 月額5,000円〜 | 1か月 |
| 受注管理システムとの連携 | 導入費用数十万円〜 | 2〜3か月 |
まず着手すべきは、表の一番上です。
多くの複合機には、受信したFAXを自動でPDF化してメールに転送する機能が最初から入っています。
追加費用なしで、紙が出力されなくなります。
FAX専用機を置き続けるコストも見てみる
見落とされがちですが、FAXの維持には継続的な費用がかかっています。
- 電話回線の基本料
- インク・トナー・用紙代
- 深夜に届いた広告FAXの用紙代(これが意外と多いのです)
- 受信した紙を仕分け・保管する人件費
「今のままでもタダ」ではありません。
インターネットFAXに切り替えると、これらのうち複数が同時になくなります。
補助金が使える場合もある
受注管理システムとの連携など、表の下段に進む段階では、国のデジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)の対象になる場合があります。
ただし申請には審査があり、採択を保証するものではありません。
補助金は精算払い(後払い)で、交付決定前に発注すると対象外になります。
制度内容や公募時期は年度により変わりますので、最新の公募要領をご確認ください。
(大分の補助金・支援策まとめはこちら)
FAXを「悪者」にしない視点も大切
FAXには今でも一定の価値がある
FAXには、「誤送信のリスクが電話やメールより低い」「相手が確実に受信した記録が残る」「専門知識がなくても使える」といった、今でも一定の価値がある特徴があります。
「FAXは古い、悪いもの」と決めつけるのではなく、「自社の業務効率化のために、デジタルとの併用を進める」という柔軟な姿勢で取り組むことが、関係性を損なわない移行のコツです。
完全に脱FAXすることがゴールではない
すべての取引先がデジタルに移行することを最終目標にする必要はありません。
「自社の業務負担を減らす」という本来の目的を忘れず、無理のない範囲で進めることが大切です。
まとめ:「変化を強制しない」ことが、スムーズな移行のコツ
この記事のポイントをまとめます。
- FAX移行が難しいのは「相手がいる」という特殊な事情があるためです。 まずは自社内のFAX対応プロセスをデジタル化することから始めましょう。
- 「選択肢を増やす」という伝え方で、取引先に負担をかけずに移行を促せます。 デジタルに慣れた取引先から段階的に進めましょう。
- どうしても難しい取引先には、自社側でデジタル変換する工夫を。 FAXを完全になくすことより、業務効率化という本来の目的を大切にしましょう。
「取引先とのFAX対応をどう改善すればいいか相談したい」——そんな方は、お気軽にご相談ください。
あわせて読みたい:
– 机の上の書類を減らしたい!紙中心の管理から抜け出す3つのステップ
– 「あの書類どこだっけ?」をゼロに。デジタル保存で探す時間を利益に変える
– 現場の「報告書」をスマホ入力に。移動時間を有効活用するアイデア
– 長い資料を読む時間がない!AIに「要約」させて要点だけを掴む裏ワザ
にほんブログ村