「人手が足りない。でも採用してもすぐ辞めてしまう」——そんな悩みを、設備投資で解決するための国の補助金が「中小企業省力化投資補助金(一般型)」です。2026年8月18日に第8回公募が始まりました。
補助上限額は従業員数に応じて750万円〜8,000万円。
大幅な賃上げに取り組む場合は最大1億円まで引き上げられます。
この記事では、対象者・補助額・要件・加点・申請前の注意点までをわかりやすく解説します。
この補助金の目的と「一般型」の位置づけ
正式名称は「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」。
実施しているのは独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)です。
目的は、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等のデジタル技術を活用した専用設備を導入する費用を補助し、省力化投資を促進して付加価値額・生産性の向上を図るとともに賃上げにつなげることとされています。
この補助金には2つの型があります
- カタログ注文型…国が省力化効果を認めた製品カタログから選ぶ方式。申請が迅速かつ簡易
- 一般型(本記事)…自社専用に設計された設備が対象。審査項目は多いが対応できる範囲が広い
公募要領では、申請を検討する前に必ずカタログ注文型の製品カタログを確認するよう求めています。
補助対象者(応募できる事業者)
日本国内に法人登記等があり、日本国内で事業を営み、本社と補助事業の実施場所を有する中小企業等が対象です(個人事業主を含む)。
業種ごとに資本金・常勤従業員数の上限があります。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業 | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
※資本金「または」常勤従業員数のいずれかが上記以下であれば該当します。
対象外となる事業者:みなし大企業(大企業が株式の1/2以上を所有等)、直近過去3年間の課税所得の年平均額が15億円超、反社会的勢力に該当する事業者、応募申請時に従業員数が0名の事業者など。またグループ内で親会社が議決権50%超を持つ子会社等は「みなし同一法人」として1社のみ申請可能です。
補助上限額・補助率
| 従業員数 | 補助上限額 | 大幅賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率は、中小企業が2分の1(最低賃金引き上げ特例で3分の2)、小規模企業者・小規模事業者および再生事業者が3分の2です。
なお、申請にあたっては単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が1つ以上必須です。
補助金は精算払い(後払い)で、収益納付は求められません。
最大1億円になる2つの特例措置
① 大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例
- 引き上げ額:5人以下+250万円/6〜20人+500万円/21〜50人+1,000万円/51〜100人+1,500万円/101人以上+2,000万円
- 要件:1人当たり給与支給総額を年平均成長率+6.0%以上(基本要件+3.5%にさらに+2.5%以上)増加させること
- かつ、事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+50円以上の水準とすること
② 最低賃金引き上げに係る補助率引き上げの特例
- 中小企業の補助率が1/2 → 2/3 にアップ
- 要件:2024年10月〜2025年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である月が3か月以上あること
※再生事業者・常勤従業員がいない場合は引き上げ不可。特例には併用制限があります。
対象は「オーダーメイド設備」
この補助金で最も重要なポイントです。汎用設備・パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを「単体で」導入する事業は対象外です。
オーダーメイド設備とは、ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のSIer(システムインテグレータ)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステムのことをいいます。
ただし、次の場合は汎用設備であってもオーダーメイド設備とみなされます。
- 事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合
- 省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合
なお、カタログ注文型の製品カタログに登録されているカテゴリに該当する製品を一般型で導入する場合は、審査の際に一部考慮されます。
必ず満たすべき4つの基本要件
3〜5年の事業計画を策定し、以下をすべて満たす必要があります。
- 労働生産性:年平均成長率(CAGR)+4.0%以上向上(労働生産性=付加価値額÷労働者数)
- 1人当たり給与支給総額:年平均成長率+3.5%以上増加(未達の場合、達成率に応じて補助金の返還を求められます)
- 事業場内最低賃金:毎年、事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準とすること
- 一般事業主行動計画の公表:従業員21名以上の場合、交付申請時までに「両立支援のひろば」に次世代法に基づく行動計画を公表(掲載に2週間程度かかるため早めの準備が必要)
このほか、省力化指数の算出、投資回収期間の提出、付加価値額が増加する事業計画の策定も求められます。
補助対象になる経費・ならない経費
- 【必須】機械装置・システム構築費…専用の機械・装置・工具・器具、専用ソフトウェア・情報システム、それらと一体で行う改良・据付け
- 【任意】運搬費/技術導入費/知的財産権等関連経費/外注費/専門家経費/クラウドサービス利用費
※機械装置・システム構築費以外には上限あり(補助対象経費総額の1/2または1/3)。専門家経費は1日上限5万円 - 【対象となる区分】機械及び装置/器具及び備品/工具/ソフトウェア/電気通信施設利用権
- 【対象外】船舶・航空機・車両及び運搬具、パソコン・タブレット・スマートフォン本体、サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費、試運転に伴う原材料費・光熱費
リースも可能です。事業者が対象リース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されること等を条件に、事業者と対象リース会社が共同申請する形になります。
申請スケジュール(第8回公募)
- 2026年8月18日(火):公募開始
- 2026年9月中旬(予定):申請受付開始
- 2026年10月中旬(予定):申請締切
- 2027年2月上旬(予定):採択発表
- 補助事業実施期間:交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月後の日まで)
※申請受付開始日以降の日程は公式サイトでも「予定」と表記されています。
最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
申請の流れ
- GビズIDプライムアカウントを取得(発行に一定期間かかるため最優先で着手)
- 事業計画書を作成(申請者自身で作成することが求められています)
- 電子申請システムから申請(決算書2期分、履歴事項全部証明書、納税証明書 等)
- 書面審査 →(対象者は)口頭審査 → 採択発表
- 交付申請(原則、採択発表日から2か月後が期限)→ 交付決定
- 交付決定後に発注・契約 → 納品・検収・支払 → 実績報告 → 現地調査 → 補助金の交付
審査のポイントと加点10項目
審査は①補助対象事業としての適格性、②技術面(省力化指数・投資回収期間・付加価値額・オーダーメイド設備の4観点)、③計画面の3つの観点で行われます。
「足下の賃上げ」も評価されます。応募申請時の直近決算期から基準年度までの「従業員の1人当たり給与支給総額」の年平均上昇率が物価上昇率を上回る程度の賃上げが達成されない計画の場合、審査上大幅に不利になると公募要領に明記されています。
加点項目は次の10個です。
- ① 事業承継又はM&Aを実施した事業者(過去3年以内)
- ② 事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画の認定
- ③ 成長加速マッチングサービスに登録し挑戦課題を登録
- ④ 地域別最低賃金引き上げに係る加点
- ⑤ 事業場内最低賃金引き上げに係る加点(2026年6月比で55円以上の賃上げ)
- ⑥ えるぼし認定 ⑦ くるみん認定
- ⑧ 省力化ナビの活用(申請と同一のGビズIDプライムを使用すること)
- ⑨ 健康経営優良法人2026の認定
- ⑩ 生産性向上支援センター利用(2026年4月に全国47都道府県のよろず支援拠点内に新設)
なお減点もあります。
中小企業庁が所管する補助金で賃上げに関する加点を受けて採択されたにもかかわらず要件を達成できなかった場合、未達が報告されてから18か月間は大幅に減点されます。
申請前に必ず確認したい注意点
- 事前着手は一切不可。交付決定前に発注・契約した経費はいかなる理由でも対象外です
- 汎用設備・パッケージソフトの単体導入は対象外。オーダーメイド性の説明が必要です
- 口頭審査は申請者本人(法人代表者等)が対応。コンサルタント・事業計画書作成支援者・社外顧問等の同席は一切認められません
- 事業計画書の作成を支援した者がいる場合、支援者名と報酬額の記載は必須。未記載が判明した場合は虚偽として不採択・採択取消・返還の対象
- 賃上げ目標が未達だと補助金の返還義務があります(再生事業者は免除)
- 取得した資産は補助金適正化法に基づき財産処分に制限。転売・目的外使用は国庫返納の対象
- 同一法人・事業者の応募は公募回ごとに1申請のみ。みなし同一法人も1社のみ
公募要領では、作業等にかかる実際の費用とかい離した高額な成功報酬を請求する業者への注意も繰り返し喚起されています。
事業計画は申請者自身で作成することが求められている点を、あらためて押さえておきましょう。
こんな事業者に向いています
- 人手不足が深刻で、省力化・自動化の設備投資を検討している中小企業・小規模事業者
- SIer等と連携して、自社の工程に合わせた専用設備・ロボットシステムを導入したい事業者
- 賃上げに前向きで、労働生産性+4.0%・給与支給総額+3.5%の計画を実行できる事業者
- 大幅賃上げに取り組める事業者(補助上限が最大1億円まで引き上げ)
- 最低賃金近傍の従業員が多い事業者(補助率が2/3にアップする可能性)
向いていない場合:汎用設備を単体で買いたいだけの場合、賃上げ計画を立てられない場合。
カタログから選びたい方は「カタログ注文型」の方が申請は簡易です。
まとめ:重要情報一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金名 | 中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回公募 |
| 補助上限額 | 750万円〜8,000万円(大幅賃上げ特例で1,000万円〜1億円) |
| 補助率 | 中小企業1/2(最賃特例で2/3)/小規模事業者・再生事業者2/3 |
| 対象設備 | オーダーメイド設備(単価50万円以上が必須。汎用設備の単体導入は対象外) |
| 基本要件 | 労働生産性+4.0%/給与支給総額+3.5%/事業場内最低賃金+30円/行動計画の公表 |
| 申請締切 | 2026年10月中旬(予定) |
| 問い合わせ | 中小企業省力化投資補助金事務局 0570-099-660(平日9:30〜17:30) |
| 公式サイト | https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/ |
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※本記事は公募要領(第8回公募)に基づき、制度の理解を助ける目的で作成しています。
申請の可否・要件・提出書類などの最新かつ正確な情報は、必ず公式サイトの公募要領でご確認ください。
申請受付開始日以降のスケジュールは「予定」であり、変更される可能性があります。
