官民投資ロードマップを中小企業経営者向けに解説するシリーズ、最終回となる第3回はいのち・エネルギー・食編です。
合成生物学・バイオ/創薬・先端医療/資源エネルギー安全保障・GX/フュージョンエネルギー/防災・国土強靱化/フードテックの6分野18項目を扱います。
📚 本記事は「官民投資ロードマップ解説シリーズ(全4回)」の最終回です
- 全体編…ロードマップの読み方と全体像
- 第1回 デジタル・AI・コンテンツ編
- 第2回 ものづくり・素材・インフラ編
- 第3回(本記事・最終回)いのち・エネルギー・食編
最初に正直にお伝えします
この回は創薬・電力・重工業が中心の項目が多く、前回(ものづくり編)ほど中小企業への直接的な言及は多くありません。
ただしその中でも「ここは見逃せない」という記述が2つあります。
防災技術と、次世代型太陽電池です。
投資額の合計は6分野18項目で少なくとも約122兆円。
金額規模は大きいものの、その多くは製薬企業や電力会社が主体となる項目です。
この記事では、中小企業に本当に関係する部分を絞ってお伝えします。
防災技術:中小・零細建設業者が名指しされている
資料には「建設業界は中小・零細事業者が多く、防災技術を活用できる技術人材の育成が課題」と明記されています。この回で最も具体的に中小企業に踏み込んだ記述です。
- 投資額:2030年度までで2.6兆円。加えて第1次国土強靱化実施中期計画に基づき、2030年度までに官民合わせて概ね20兆円強程度の内数を投資額として想定
- 実装フェーズの施策として「製品のカタログ化、登録・認証制度・規格化、マッチング推進、中小企業支援(施工重機、BCP強化等)」を明記
- 「中小企業における防災技術の導入資金の確保」との課題認識も記載
- 改正建設業法等に基づく処遇改善・働き方改革・教育訓練による生産性向上支援にも言及
- 海外展開ではODA活用や日本の防災技術のブランド化を推進
建設業・土木業の方にとっては、施工重機の導入やBCP強化が政策的な支援対象として位置づけられている点が重要です。
次世代型太陽電池:中小企業のキャッシュフロー問題
投資促進の課題として「サプライチェーン上の中小企業のキャッシュフローの不安定性」が明記されています。国も資金繰りリスクとして認識しているということです。
- 投資額 4.1兆円/波及効果 22.9兆円
- 日本はフィルム型・タンデム型ペロブスカイト太陽電池で技術的な強みを持つ数少ない分野
- 2030年を待たずGW級量産体制の構築を目指し、国内需要は2040年までに約20GWの導入目標
- フィルム型ペロブスカイト太陽電池の各種工場等への設置に必要な安全対策の明確化も進む
サプライチェーンに連なる中小事業者にとっては、この課題認識を踏まえた資金繰り対策の検討材料になります。
いのちの分野(6項目)投資額 約77.7兆円
- ファーストインクラス製品・ベストインクラス製品 23.4兆円(波及効果162.1兆円)
- バイオ医薬品・再生医療等製品等 20.8兆円(波及効果174.9兆円)
- バイオものづくり 12.8兆円/革新的デバイス活用の先端医療 11.6兆円
- 感染症対応製品 7.2兆円/ライフログデータ等を活用したヘルスケア関連サービス 1.1兆円
金額は6分野で最大ですが、主体は製薬企業・医療機器メーカーが中心です。中小企業に関係する記述としては、ヘルスケア関連サービスで「中小企業向けの経営支援機関等との連携強化や健康経営の推進」への言及があります。
資源エネルギー安全保障・GX(7項目)約28.8兆円/フュージョン 3.1兆円
- 水素等 6.2兆円(波及効果85.3兆円)/洋上風力 5.1兆円/次世代革新炉 5.0兆円
- 次世代型太陽電池 4.1兆円/グリーン鉄 4.2兆円(マテリアル分野と同一項目)
- GXケミカル 3.2兆円/次世代型地熱 1.0兆円
- フュージョンエネルギー 3.1兆円(発電実証プラント1基を仮定した試算。2030年代の発電実証以降は投資額の増加が見込まれる)
洋上風力・次世代革新炉・フュージョンは電力会社や重工メーカーが主体となる大型プロジェクトですが、建設・電気工事・メンテナンスの裾野は広く、地域の事業者に仕事が回る構造は共通しています。
フードテック(4項目)約9.7兆円
- 植物工場 4.6兆円(波及効果36.8兆円)/陸上養殖 2.9兆円(波及効果47.1兆円)
- 食品機械 1.2兆円(波及効果18.8兆円)/新規食品 1.0兆円(波及効果18.8兆円)
陸上養殖:「浜の経済活性化」が明記されている
経済的重要性として「既存の加工・流通施設の利用や新たな水産物サプライチェーンの構築による地域(『浜』)の経済活性化、雇用創出」と明記されています。
- 投資主体に「漁協等」が明記され、地域の漁業関係者との連携が想定されている
- 「漁港施設の有効活用も含めた用地の確保と利用調整等、事業再編の促進等の制度改革」に言及
- 背景として、水産物需要が世界的に拡大する一方、国内の漁獲量・養殖生産量は減少傾向
水産加工業・流通業にとっては、既存施設の活用が前提に置かれている点が現実的です。
まとめ:業種別の狙い目
| 業種 | 狙い目 |
|---|---|
| 建設業・土木業 | 防災技術の中小企業支援(施工重機・BCP強化)、導入資金の確保、技術人材育成 |
| 太陽電池サプライチェーン | キャッシュフロー不安定性を国が課題認識。GW級量産体制構築に向けた動き |
| 水産加工・流通業 | 陸上養殖で「浜の経済活性化」。既存の加工・流通施設の利用が前提 |
| 農業・食品製造業 | 植物工場4.6兆円、食品機械1.2兆円、新規食品1.0兆円 |
| 電気工事・設備業 | 洋上風力・次世代革新炉・地熱など大型電源の建設・保守の裾野 |
| 全業種共通 | 健康経営の推進(ヘルスケア関連サービスで経営支援機関との連携強化に言及) |
シリーズを終えて
全4回にわたり、62項目・投資額370兆円超の官民投資ロードマップを中小企業の視点で読み解いてきました。
- 全体編…資料の読み方。自社に近い項目の5ページだけ読めばよい
- 第①回…データセンターの地方立地、中小運送事業者への自動運転支援、アニメの取引適正化
- 第②回…造船の集積地(瀬戸内・九州)、防衛サプライチェーンへの新規参入支援、港湾の保管料課題
- 第③回…防災技術の中小・零細建設業者、太陽電池のキャッシュフロー課題、陸上養殖の浜の経済
共通して言えるのは、この資料が「大企業の投資計画」ではなく、地域と中小企業を組み込んだ需要地図として書かれているということです。
自社の技術がどの分野の政策パッケージに関係するか、まずは調べてみる価値があります。
シリーズ完結:官民投資ロードマップ解説 全4回
62項目・投資額370兆円超のうち、自社に関係する分野を見つけていただけたなら幸いです。
自社に使える支援策は、よろず支援拠点や商工会議所へご相談ください。
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※本記事は公表資料(戦略17分野における「主要な製品・技術等」の官民投資ロードマップ・同参考資料)に基づき、資料の理解を助ける目的で作成しています。
投資額等は現時点の想定であり、今後改定される可能性があります。最新かつ正確な情報は、内閣官房のホームページで公開されている原文をご確認ください。
官民投資ロードマップ 解説シリーズ(全4回)
62項目・投資額370兆円超の官民投資ロードマップを、中小企業の視点で分野別に読み解いたシリーズです。自社に関係する分野からお読みください。
- 【全体編】370兆円の投資先と自社の商機の探し方
- 【第1回】デジタル・AI・コンテンツ編(半導体68兆円・データセンター・自動運転)
- 【第2回】ものづくり・素材・インフラ編(造船・防衛産業・港湾)
- 【第3回・最終回】いのち・エネルギー・食編(防災技術・太陽電池・陸上養殖)(この記事)
