「新しい製品を開発したい」「今とは違う市場に打って出たい」「海外に販路を広げたい」——そんな中小企業の挑戦を後押しするのが「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。
2026年6月29日に第1回公募が始まりました。
この補助金の最大の特徴は、目的別に3つの申請枠が用意されていること。
補助上限額は最大7,000万円、賃上げ特例を使えば9,000万円まで引き上げられます。
この記事では、3つの枠の違いと選び方、要件、加点、申請前の注意点までを整理します。
申請締切:2026年10月30日(金)18:00 厳守
この補助金の目的と3つの申請枠
正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」。
実施しているのは独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)です。
目的は、技術的革新性のある製品・サービスの開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓に向けた国内の輸出体制の強化を後押しし、企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげることとされています。
この3つの目的に対応して、申請枠も3つ用意されています。
同一事業者の応募は1回の公募につき1申請のみですので、どれか1つを選んで申請することになります。
① 革新的新製品・サービス枠
革新的な新製品・新サービス開発の取組を支援する枠です。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜5人 | 750万円 | 850万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
- 補助下限額:100万円(3枠のなかで最も低く、小規模な投資でも申請しやすい)
- 補助率:中小企業者 1/2(特例2/3)/小規模企業・小規模事業者・再生事業者 2/3
- 実施期間:交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)
- 必須経費:機械装置・システム構築費
注意:既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業は対象外です。
また、単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものも該当しません。
同業他社で既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発も対象外です。
② 新事業進出枠
既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。
条件は次の2つを満たすことです。
- ① 新たに製造等する製品等が、その中小企業等にとって新規性を有すること
- ② その製品等の属する市場が、その中小企業等にとって新たな市場であること
【重要】ここでの「新規性」は日本初・世界初ではありません。
公募要領には「ここでの新規性とは、補助事業に取り組む中小企業等にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません」と明記されています。
ハードルを高く誤解している方が少なくない部分です。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
- 補助下限額:750万円/補助率:1/2(特例2/3)
- 実施期間:交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)
- 必須経費:機械装置・システム構築費 または 建物費
新事業進出枠に「該当しない」7つの例
公募要領には該当しない例が7つ明示されています。
- 既存の製品等の製造量又は提供量を増大させる場合(増産だけでは対象外)
- 過去に製造していた製品等を再製造等する場合
- 単に既存の製品等の製造方法を変更する場合
- 性能が定量的に計測できる場合に、その性能が有意に異なるとは認められない場合
- 既存の製品等と対象とする市場が同一である場合(単なるメニューの追加と考えられる場合を含む)
- 既存の製品等の市場の一部のみを対象とするものである場合
- 既存の製品等が対象であって、単に商圏が異なるものである場合(他県への出店だけ 等)
③ グローバル枠
海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組を支援する枠です。
- 条件①:自社の製品等を活用し、自発的に新たな海外販路を開拓するうえで必要となる国内製造等拠点の強化に取り組むこと
- 条件②:事業により製造等する製品等の属する市場が、その中小企業等にとって新たな海外市場であること
- 補助上限額:新事業進出枠と同額(2,500万〜7,000万円/特例3,000万〜9,000万円)/補助下限額750万円
- 補助率:一律 2/3 ← 3枠のなかで最も高い
- 実施期間:交付決定日から14か月以内
- 対象経費に「海外旅費」「通訳・翻訳費」が追加されるのが特徴
※取引先主導の事業は「自発的な取組」とは言えず補助対象外です。
自社はどの枠? 3枠の比較
| 枠 | こんな企業に | 補助上限/補助率/下限 |
|---|---|---|
| ①革新的新製品・サービス枠 | 自社の技術を活かして新しい製品・サービスを開発したい | 2,500万円(特例3,500万円)/1/2〜2/3/下限100万円 |
| ②新事業進出枠 | 今とは違う市場・お客様に向けた事業を新しく始めたい | 7,000万円(特例9,000万円)/1/2〜2/3/下限750万円 |
| ③グローバル枠 | 海外に売りたいので国内の製造・輸出体制を強化したい | 7,000万円(特例9,000万円)/一律2/3/下限750万円 |
小規模事業者で投資額を抑えたいなら①、大きな設備投資や建物を伴うなら②③が目安になります。
②③枠は建物費が対象のため、新工場・新店舗の建設を伴う計画も可能です。
必ず満たすべき6つの基本要件
3〜5年の事業計画を策定し、以下をすべて満たす必要があります。
- 付加価値額要件:年平均成長率 +4.0%以上増加(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)
- 賃上げ要件:一人当たり給与支給総額の年平均成長率 +3.5%以上増加【未達で返還義務】
交付申請時までに全従業員または従業員代表者への表明が必須。表明がなかった場合は交付決定取消・全額返還 - 事業場内最賃水準要件:毎年、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より +30円以上高い水準【未達で返還義務】
- ワークライフバランス要件:次世代法に基づく一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」に公表
- 子育て等に関する職場環境整備要件:(ア)〜(ウ)から1つ選択して取り組む
- 金融機関要件:資金提供を受ける場合は「金融機関による確認書」を提出
要件⑤ 子育て等の職場環境整備(3択)
第1回公募の特徴的な要件です。
次の3つから1つを選んで取り組みます。
- (ア)ライフデザインサービスの活用…FP・IFA・銀行・証券会社・保険会社等による、ライフプラン表の作成や家計・保険・住宅ローン・資産運用・老後資金の相談サービス
- (イ)家事代行サービス・ベビーシッターサービスの活用(認証事業者一覧に掲載の事業者に限る)
- (ウ)子育て等に関する既存制度の周知・普及・啓発…産前産後休業、育児休業、短時間勤務、フレックスタイム、年次有給休暇 等
※プラチナくるみん・くるみん・トライくるみんのいずれかの認定を取得している事業者は本要件が免除されます。
2つの特例措置
- 賃上げ特例(補助上限額の引き上げ)…一人当たり給与支給総額の年平均成長率を基準値+3.5%に加えさらに+2.5%(合計+6.0%以上)、かつ事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+50円以上高い水準とすること。※各申請枠の補助上限額に達しない場合は適用不可。未達の場合は引上げ分を全額返還
- 地域別最低賃金引上げ特例(補助率の引き上げ)…2024年10月〜2025年9月の間で、最低賃金近傍で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上あること。この特例を適用すると基本要件③(事業場内最賃水準要件)が除外されます
補助対象者・補助対象経費
日本国内に本社及び補助事業実施場所を有する中小企業者・小規模企業者・特定事業者の一部等が対象です。
業種ごとに資本金・常勤従業員数の上限があります(製造業・建設業・運輸業は3億円または300人以下 など)。
注目したいのは「特定事業者の一部」も対象になる点です。
資本金10億円未満かつ常勤従業員数が製造業等500人・卸売業400人・サービス業/小売業300人以下であれば、中小企業者に該当しなくても申請できます。
- 必須経費:①枠は機械装置・システム構築費/②③枠は機械装置・システム構築費 または建物費
- 対象経費:運搬費/技術導入費/知的財産権等関連経費/外注費/専門家経費/クラウドサービス利用費/原材料費/広告宣伝・販売促進費(③枠は海外旅費・通訳翻訳費も)
- 対象外:船舶・航空機・車両及び運搬具。一過性の支出が補助対象経費の大半を占める場合も対象外
申請スケジュール(第1回公募)
- 2026年6月29日(月):公募開始
- 2026年9月30日(水):申請受付開始
- 2026年10月30日(金)18:00:申請締切【厳守】
- 2027年1月頃(予定):補助金交付候補者の採択発表
※締切間際は申請が集中します。
電子申請の入力には数時間程度を要するため、余裕を持って手続きを始めてください。
採択後は、事業計画期間(5年間)にわたって事業化状況報告等の報告義務があります。
審査のポイントと加点16項目
審査は7つの観点で行われます。
①補助対象事業としての適格性、②経営戦略との整合性、③事業の実現可能性、④新規事業の新市場性・高付加価値性(新事業進出枠に限る)、⑤公的補助の必要性、⑥政策面、⑦大規模な賃上げ計画の妥当性(賃上げ特例希望者)です。
「足下の賃上げ」も評価されます。
公募要領には「最低でも、応募申請時の直近の事業年度から基準年度までの『1人当たり給与支給総額』の年平均成長率が物価上昇率を上回る程度の賃上げが達成されない場合は審査上大幅に不利になります」と明記されています。
加点項目は16個あります。
- ①パートナーシップ構築宣言
- ②くるみん
- ③えるぼし
- ④健康経営優良法人2026
- ⑤再生事業者
- ⑥経営革新計画
- ⑦事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画
- ⑧DX認定
- ⑨J-Startup/J-Startup地域版
- ⑩新規輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
- ⑪日本の食輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
- ⑫研究開発費・試験研究費の計上
- ⑬技術情報管理認証制度
- ⑭成長加速マッチングサービス
- ⑮アトツギ甲子園
- ⑯地域別最低賃金引上げ
※加点項目は「申請締切日時点」で満たしている必要があります。
申請前に必ず確認したい注意点
- GビズIDプライムの発行に1週間程度、一般事業主行動計画の公表に1〜2週間程度かかります。手続きの遅れによる申請期限の延長等は一切認められません
- 事業計画は必ず申請者自身で作成してください。作成自体を申請者以外が行うことは認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消となります
- 事業計画作成支援者がいる場合、支援者名・支援内容・報酬(予定)額・契約期間の入力が必須(未入力は不採択・採択取消・交付決定取消)
- 同一事業者・みなし同一事業者の応募は1公募につき1申請のみ(代表者及び住所が同じ法人、主要株主及び住所が同じ法人、実質的支配者が同じ法人も同一とみなす)
- 取得財産は「専ら補助事業に使用」が原則。既存事業に用いた場合は残存簿価相当額等の納付が必要
- 不正受給が判明した場合、加算金を課した上で返還。補助金適正化法第29条に基づき5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性も
公募要領では、提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬等を請求する悪質な業者への注意も繰り返し喚起されています。
会社全体の事業計画の策定支援は、よろず支援拠点等の公的支援機関でも相談できます。
こんな事業者に向いています
- 自社の技術を活かして新製品・新サービスを開発したい中小企業(→ ①革新的新製品・サービス枠)
- 今とは違う顧客層・市場に向けた事業を新しく始めたい事業者(→ ②新事業進出枠)
- 海外への輸出を本格化させ、国内の製造・輸出体制を強化したい事業者(→ ③グローバル枠)
- 新工場・新店舗など建物への投資を伴う事業を計画している事業者(②③枠は建物費が対象)
- 賃上げに前向きで、付加価値額+4.0%・給与支給総額+3.5%の計画を実行できる事業者
向いていない場合:既存製品の増産のみ、単なる商圏拡大のみ、賃上げ計画を立てられない場合。
なお、省力化・自動化が目的であれば「中小企業省力化投資補助金」の方が適している可能性があります。
まとめ:重要情報一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金名 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募) |
| ①革新的新製品・サービス枠 | 750万〜2,500万円(特例3,500万円)/補助率1/2〜2/3/下限100万円 |
| ②新事業進出枠 | 2,500万〜7,000万円(特例9,000万円)/補助率1/2〜2/3/下限750万円 |
| ③グローバル枠 | 2,500万〜7,000万円(特例9,000万円)/補助率一律2/3/下限750万円 |
| 基本要件 | 付加価値額+4.0%/給与支給総額+3.5%/事業場内最低賃金+30円/行動計画公表 ほか計6つ |
| 申請締切 | 2026年10月30日(金)18:00 厳守 |
| 公式サイト | https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/ |
まずはGビズIDの取得と行動計画の公表準備から
GビズIDの発行に1週間、行動計画の公表に1〜2週間かかります。
締切は10月30日18:00厳守です。
自社がどの枠に当てはまるか迷ったら、よろず支援拠点や商工会議所へご相談を。
▶ 動画版では図解つきでさらに詳しく解説しています
チャンネル登録・高評価もよろしくお願いします。
※本記事は公募要領(第1回公募 1.2版)に基づき、制度の理解を助ける目的で作成しています。
申請の可否・要件・提出書類などの最新かつ正確な情報は、必ず公式サイトの公募要領でご確認ください。
公募要領は必要に応じて改訂されることがあります。
