「フロントに人が張り付いていて、他の仕事が回らない」
「清掃スタッフの募集をかけても、応募が来ない」
大分県内で宿泊施設を経営されている方から、こうしたご相談をいただくことが増えました。
人を増やして解決する時代ではなくなった以上、機械やシステムに任せられる仕事は任せるしかありません。
その初期投資を県が補助する制度があります。
大分県宿泊事業者DX推進事業費補助金です。
補助上限は1施設あたり最大340万円、補助率は最大で4分の3。
清掃ロボットや自動チェックイン機の導入費用が対象になります。
ただし、この補助金には見落としやすい条件が3つあります。順番に、この記事で整理していきます。
申請締切は2026年12月28日(月)。
ただし受付順のため、予算に達した時点で期間内でも終了する可能性があります。
補助率と上限額:2つの枠があります
この補助金には「一般枠」と「賃上げ枠」の2区分があります。
| 枠 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 一般枠 | 2/3以内 | 1施設あたり300万円 |
| 賃上げ枠 | 3/4以内 | 1施設あたり340万円 |
300万円の設備を導入した場合で比べると、違いがはっきりします。
| 枠 | 補助額 | 自己負担 |
|---|---|---|
| 一般枠(2/3) | 200万円 | 100万円 |
| 賃上げ枠(3/4) | 225万円 | 75万円 |
同じ投資額でも、自己負担が25万円変わります。
ただし賃上げ枠には条件があります。
令和8年6月26日から令和9年2月20日の間に、1ヶ月の給与・賃金等の総支給額を、賃上げ前の月と比べて1.5%以上増やすことです。
ここで申し上げておきたいのは、補助率のために無理な賃上げをする必要はないということです。
もともと賃上げを予定されているなら賃上げ枠、そうでなければ一般枠。
それで構いません。
人件費は一度上げると下げられませんから、25万円のために判断を誤らないでください。
どんな設備が対象になるのか
募集要項には、次のような例が挙げられています。
- フロント業務:自動チェックイン機、キャッシュレス決済端末
- 予約・管理:PMS(ホテル管理システム)、自社Webサイトへの予約機能の追加
- 清掃業務:清掃ロボット、清掃管理システム
- 食事・配膳:オーダーシステム、配膳ロボット
- 館内業務:インカム、温度管理システム、混雑状況可視化システム
重要なのは、これが「あくまで例示であり、これに限るものではありません」と明記されている点です。
実際、県が公開しているQ&Aでは、次のものについても「業務の効率化・省力化や生産性向上に繋がるなら対象となり得る」と回答されています。
つまり、判断の基準は「デジタルを活用して、業務が楽になるか」です。
カタログに載っている定番商品でなくても、理由を説明できれば対象になり得ます。
【落とし穴1】月額利用料は対象外です
ここが最も誤解されやすい点です。
補助されるのは「導入にかかる費用のみ」。月額利用料、レンタル料、リース料、サブスクリプション費用は対象になりません。
この点はQ&Aの中で、5つの質問にわたって繰り返し明記されています。
それだけ問い合わせが多いということでしょう。
最近のシステムは「初期費用0円、月額◯万円」という料金体系が主流です。
この形だと、補助を受けられる部分がありません。
逆に「初期導入費用◯十万円+月額◯万円」という契約であれば、初期導入費用の部分だけが対象になります。
見積もりを取る段階で、業者に初期費用と月額費用を分けて記載してもらうことをおすすめします。
【落とし穴2】「乗り換え」「買い替え」だけでは対象外
次の3つも対象外です。
- 単なるシステムの乗り換え(A社のシステムからB社のシステムへ)
- 単なる機器の買い替え(古くなったWi-Fiやパソコンの入れ替えだけ)
- 既に導入済みの設備・システム(制度を知る前に導入したものは遡って申請できません)
ただし2つ目には補足があります。新しいシステムの導入に合わせてパソコンを買い替える場合は、実施計画書にその内容を記載すれば申請可能です。
「会計ソフトを新規導入するため、対応するPCに入れ替える」といった説明ができれば通ります。
このほか、中古品、税理士等への相談費用、紙の印刷経費、食洗機やオーブンレンジといった厨房機器も対象外です。
【落とし穴3】申請は「1施設につき1回限り」
これが、計画段階で最も注意していただきたい点です。
- 申請は1施設につき1回限り。「1事業者につき1回」ではありません
- 1回目の申請で補助上限額に達していなくても、2回目以降の追加申請はできません
- 交付決定を受けた実施計画にない、新しい支出の追加や増額もできません
Q&Aには具体例が載っています。
「8月に掃除ロボットで申請し、11月に自動チェックイン機を申請」——これはできません。
つまり、導入したいものは最初にすべて洗い出して、まとめて計画する必要があります。
「とりあえず今回は清掃ロボットだけ」と進めてしまうと、残りの枠を使う機会は二度と来ません。
なお施設の単位は「旅館業法の許可/住宅宿泊事業法の届出に記載されている施設」です。
敷地内の5棟のコテージを1件の許可でまとめて受けている場合は、1施設として上限300万円となります。
対象になる事業者は、思ったより幅広い
対象は大分県内に所在する宿泊施設の経営者で、次のいずれかに該当する施設です。
- 旅館業法 第3条第1項の許可を受けた「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」
- 住宅宿泊事業法 第3条第1項の届出をした「住宅宿泊事業」(民泊)
判断の分かれ目は「許可または届出があるかどうか」だけです。
Q&Aでは、次のケースがいずれも「申請可能」と回答されています。
- 本社が県外でも、宿泊施設が県内にある場合
- 民泊を営んでいる場合
- ラブホテルを運営している場合
- 外資系の法人である場合
- 事業承継で休業中の許可を引き継ぎ、開業準備中の場合
「うちは対象外だろう」と思い込んで確認しないまま終わるのは、もったいない話です。
申請の流れと、見積書の注意点
流れは次のとおりです。
- 交付申請
- 審査・交付決定通知(概ね1〜2ヶ月)
- 発注・契約・導入
- 実績報告書の提出
- 補助金額の確定通知
- 交付請求書の提出
- 補助金の支払い
原則として、交付決定通知書を受け取る前の発注・契約・支払いは補助対象外です。
やむを得ず先に着手する場合は「事前着手届」を提出してください。
届出以降の経費であれば対象にできます。
見積書については、次の点にご注意ください。
- 1件につき金額が10万円を超えるものは相見積もり(複数事業者)が必要。1社しか取れない場合は「随意契約理由書」を提出
- 「一式」ではなく、作業内容や単価など金額の根拠がわかる内訳が必要
- 押印は不要
- 審査から交付決定まで1〜2ヶ月かかるため、その間に価格が上がった分は申請者負担になります
事業の完了期限は2027年2月20日が原則です。
逆算すると、機器の納期も含めて余裕を持った計画が必要になります。
もう一つの補助金との使い分け
大分県には、宿泊事業者向けにもう一つ「宿泊税対応システム改修事業費補助金」(上限200万円)があります。
| 補助金 | 対象 | 上限額 |
|---|---|---|
| 宿泊税対応システム改修 | 宿泊税の導入に伴う、既存システムの改修 | 200万円 |
| 宿泊事業者DX推進(本記事) | DX推進に資するシステム・機器の購入、導入、改修 | 300万円 (賃上げ枠340万円) |
宿泊税への対応が目的の場合、PMSを“新たに”導入するなら本補助金、“既に”導入しているシステムを改修するなら宿泊税対応システム改修補助金が対象です。両方の申請も可能とされています。
まとめ:まず「何を導入したいか」の洗い出しから
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金名 | 大分県宿泊事業者DX推進事業費補助金 |
| 補助率・上限額 | 一般枠 2/3以内・300万円/賃上げ枠 3/4以内・340万円 |
| 対象者 | 県内で旅館業法の許可または住宅宿泊事業法の届出がある宿泊施設の経営者 |
| 対象経費 | デジタルを活用した省力化・生産性向上のためのシステム・機器の導入/改修 |
| 対象外 | 月額利用料・サブスク/単なる乗り換え・買い替え/導入済みの設備/中古品 |
| 申請締切 | 2026年12月28日(月)※受付順・予算到達で早期終了あり |
| 事業完了期限 | 2027年2月20日が原則 |
| お問い合わせ | 大分県宿泊税対応システム改修・DX推進補助金事務局 TEL 097-535-8090(平日 9:45〜17:15) |
この補助金で最も重要なのは、申請が1施設1回限りだということです。
補助率や対象設備の細かい話より先に、「自社の業務のどこが一番苦しいか」「何を入れれば楽になるか」を洗い出してください。
そのうえで、まとめて計画を立てる。
それがこの制度を最大限に活かす方法です。
判断に迷う場合は、事務局(097-535-8090)に問い合わせるのが確実です。
Q&Aを読む限り、県の担当も個別相談には丁寧に応じる姿勢です。
動画版では図解つきでさらに詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。
当事務所では、補助金の活用相談やDX・IT活用の基礎がわかる無料セミナーも定期開催しています。
※本記事は交付要綱・重要説明事項・Q&Aに基づき、制度の理解を助ける目的で作成しています。
申請の可否・要件・提出書類などの最新かつ正確な情報は、必ず大分県の公式ページでご確認ください。

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