売上が落ちてきた。人が採れない。何から手をつければいいか分からない。
誰かに相談したいけれど、コンサルタントは高そうだし、怪しい業者もいると聞く。
そう思って調べ始めた方に向けた記事です。
はじめにお断りしておくと、筆者自身が中小企業診断士です。
ですからこの記事は、自分の仕事を売り込まない書き方をします。
実際、この記事でいちばん先にお伝えするのは「大分には無料で何度でも相談できる窓口がある」という、私にとっては不利な情報です。
それを知ったうえで、それでも有料の専門家が必要になる場面があります。
順番に見ていきます。
まず、無料で相談できる場所があります

大分県よろず支援拠点は、何度でも無料です
国が全都道府県に設置している中小企業向けの相談窓口です。
大分県よろず支援拠点の案内には、こう書かれています。
「何度ご利用いただいても無料です。」「相談回数に制限はありません。」
売上、資金繰り、人材、IT活用など、相談内容は限定されていません。
来所のほか、オンライン(Teams)・電話・出張相談会にも対応しています。
要事前予約で、電話は097-537-2837。
平日9時から17時(最終受付16時)です。
「何から手をつけるか分からない」という段階であれば、まずここで課題を整理してもらうのがいちばん費用対効果が高いと思います。
商工会議所・商工会は、会員でなくても無料です
大分県内には商工会議所が10、商工会が17あります。
経営に関する相談は、会員・非会員を問わず無料と明示されています。
地域の事業者を長く見ているので、「同じ業種の他店はどうしているか」という相場観を持っているのが強みです。
大分商工会議所は097-536-3131、大分県商工会連合会は097-534-9507です。
目的が決まっているなら、専用の窓口があります
相談したい内容がはっきりしている場合は、専門の窓口のほうが早いことがあります。
| 窓口 | 対象 | 費用・回数 |
|---|---|---|
| 大分県信用保証協会 専門家派遣 | 資金繰り・経営改善 | 無料(原則3回、必要に応じ最大5回) |
| 大分県事業承継・引継ぎ支援センター | 事業承継・M&A | 相談と専門家による個者支援は無料 |
| 大分県中小企業活性化協議会 | 経営改善・再生 | 窓口相談は無料 |
| 大分県中小企業団体中央会 | 組合設立・運営、労務 | 097-536-6331 |
| 大分市産業活性化プラザ | 創業・経営・技術 | 097-576-8879 |
事業承継・引継ぎ支援センターについては、民間のM&A仲介業者を紹介された場合は別途費用が発生します。
センターの相談自体が無料であることと、紹介先が無料であることは別です。
「公的機関=すべて無料」ではありません

ここで誤解を解いておきます。
1回10,200円で専門家に来てもらう仕組みもあります
公益財団法人 大分県産業創造機構の専門家派遣は、無料ではありません。
企業の負担は謝金の3分の1にあたる1回10,200円(税込)です。
残りの3分の2と交通費は機構が負担します。
1回おおむね3時間、最大5回まで。
経営戦略、人手不足、DX、技術といったテーマで、事業計画や収益性改善、商品開発などを相談できます。
見方を変えれば、1回1万円強で5回まで、専門家の伴走を公定価格で買える仕組みです。
民間に頼めば1日10万円を超えることもある内容が、この価格で受けられます。
097-533-0220が窓口です。
公的窓口がやらないこと
無料の窓口にも、できないことがあります。
よろず支援拠点は、留意事項のページで明確に線を引いています。
「行政手続き・融資手続き・助成金申請などの実務代行は行っていない」
つまり、助言はしてくれますが、書類を代わりに作ってはくれません。
「相談した結果、やるべきことは分かった。でも自社でやる余力がない」。
有料の専門家が必要になるのは、たいていこの場面です。
有料で頼むといくらかかるのか
ここからが相場の話です。
ネット上の「コンサル費用の相場」は出典が書かれていないものが大半なので、公的な調査の数字を使います。
公的な調査で分かっている相場
日本中小企業診断士協会連合会が、全国の会員診断士1,847名を対象に実施した調査があります(令和7年11月調査・令和8年5月公表)。
診断士業務に年100日以上従事している人の、1日あたりの報酬の平均額です。
| 業務 | 公的業務の割合が高い層 | 民間業務の割合が高い層 |
|---|---|---|
| 診断業務 | 39,400円 | 107,200円 |
| 経営支援業務 | 43,300円 | 119,400円 |
| 調査研究業務 | 30,500円 | 92,000円 |
| 講演・教育訓練業務 | 43,800円 | 115,200円 |
顧問契約についても数字が出ています。
| 項目 | 公的業務が高い層 | 民間業務が高い層 |
|---|---|---|
| 顧問契約を結んでいる割合 | 20.6% | 53.5% |
| 顧問先数(平均) | 2.4社 | 6.2社 |
| 顧問料の月額平均 | 75,600円 | 150,900円 |
同じ資格でも単価が3倍違う理由
表を見てお気づきのとおり、同じ中小企業診断士でも、単価に3倍近い差があります。
調査報告書自身が「平均・最高額ともに、金額に3倍近くの開きがみられる」と記述しています。
この差は能力の差ではありません。
仕事の受け方の違いです。
公的業務とは、国・県・市町村や商工会議所などの支援機関を通じた仕事で、報酬の単価が公定されています。
民間業務は企業と直接契約するもので、単価は交渉で決まります。
つまり、同じ人に頼んでも、公的な窓口を経由するか直接契約するかで費用が変わることがあります。
先ほどの産業創造機構の専門家派遣(1回10,200円)が安いのは、そういう仕組みだからです。
顧問契約・スポット・プロジェクトの違い
契約の形は大きく3つです。
- 顧問契約 ― 月額固定で継続的に相談する。月額の平均は7万5千円〜15万円程度
- スポット(窓口相談型) ― 1回ごとに相談する。日当ベース
- プロジェクト型 ― 補助金申請、経営計画策定など、成果物を決めて契約する
「とりあえず顧問契約を」と提案されたら、まずスポットで1〜2回試せないかを聞いてみてください。
相性は会ってみないと分かりません。
中小企業診断士とは何者か
ここは不都合な話も含めて正確に書きます。
国家資格ですが、独占業務の構造が他士業と違います
中小企業診断士は、中小企業支援法第11条にもとづいて経済産業大臣が登録する国家資格です。
「経営コンサルタントに関する唯一の国家資格」と説明されます。
ただし、他の士業とは構造が違います。税理士、社会保険労務士、弁護士、行政書士には、法律でその資格者にしか行えないと定められた業務があります。
一方、診断士の根拠法である中小企業支援法は登録制度を定めるもので、特定の業務を診断士に限定する規定は置かれていません。
これは実務上、読者にとって重要な意味を持ちます。
- 厚生労働省系の助成金の申請代行は、社会保険労務士の独占業務です。 診断士は代行できません
- 登記は司法書士、税務申告は税理士です
ややこしいのですが、補助金(経済産業省系)と助成金(厚生労働省系)で扱いが違います。
「補助金の相談はできるが、助成金の申請代行はできない」という専門家がいるのは、このためです。
当事務所も社会保険労務士ではないので、助成金の手続きはお引き受けできません。
「本物かどうか」を公的に確認する手段がありません
これはあまり知られていない事実です。
中小企業診断士の登録者名簿は、全件を検索できる形では公開されていません。
中小企業庁が公表しているのは月次の登録情報PDF(新規・再登録・消除と登録番号の範囲)のみで、氏名で照合することができません。
大分県中小企業診断士協会のサイトにも、会員検索の機能はありません。
実務的な確認方法は次のようになります。
- 登録証の提示を求める
- 後述の認定経営革新等支援機関として登録されているかを検索システムで見る
- 都道府県協会に問い合わせる(大分県は097-538-9123)
「認定経営革新等支援機関」の意味
補助金まわりでよく出てくる肩書きです。
中小企業等経営強化法にもとづいて国が認定した支援機関で、認定経営革新等支援機関検索システムで地域から検索できます。認定の有効期限も確認できます。
ただし、「国のお墨付き」と受け取るのは少し違います。
事業再構築補助金の公募要領には、支援者が認定支援機関であって不正に関与した場合、機関名の公表・業務改善命令・認定取消に至る可能性が明記されています。
認定支援機関とは、不正をしたときに失うものがある立場だと理解するのが正確です。
また、認定されていることと、その支援が無料であることは別の話です。
合わない専門家を避けるために
最後に、実害を防ぐための話をします。
公的機関が注意喚起していること
事業再構築補助金の公募要領には「高額な成功報酬等にご注意」という見出しがあり、不適切な行為として次が挙げられています。
- 提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬等を申請者に請求する
- 費用の水増しなど申請書に虚偽の内容の記載を教唆する、または作成支援者名を記載しないように求める
事業計画書には「作成支援者名」と「作成支援報酬額」の記入欄があります。
支援者名を書かないよう求められたら、それ自体が危険信号です。
なお、補助金申請支援の着手金や成功報酬について、公的な相場基準は存在しません。
「成功報酬10%以内が目安」といった数字がネット上にありますが、出典が示されていないものがほとんどです。
支援者の約3分の2は無報酬という事実
同じ公募要領に、こう書かれています。
「申請した事業者の支援者のうち、約2/3が報酬なしでの支援を行っています。」
有償のコンサルタントに頼まずに申請している事業者が多数派ということです。
商工会議所や金融機関の支援で済ませている例が多いからでしょう。
「補助金を取るには専門家に頼むしかない」という前提自体を、一度疑ってみてください。
事業者として契約すると「クーリング・オフ」は効きません
ここが最も見落とされやすい点です。
国民生活センターの調査報告書(2023年3月)は、起業・副業をめぐるトラブルの典型例を示しています。
SNSや動画広告で勧誘され、数万円の情報商材を買った後「儲かるまでサポートする」として30万〜200万円のコンサルタント契約を結ばされる、という流れです。
問題は、法人や個人事業主として契約すると消費者としての保護が原則として及ばないことです。
- 契約書に「営業として」の契約だと明記されていると、特定商取引法の適用除外を主張されます
- 消費者契約法を使おうとしても「事業者性」が争点になります
- ADR(裁判外紛争解決手続)でも「相談者は事業者である」として申請の却下を求められた例があります
- 支払手段で結果が分かれます。 クレジットカード払いはカード会社の協力で解決する例が多い一方、現金払いは交渉相手が事業者だけになるため解決が困難です
「8日以内ならクーリング・オフできる」という感覚は、事業者間の契約では通用しないとお考えください。
契約前に書面で確認する4項目
だからこそ、契約の前が勝負です。次の4つを、口頭ではなく書面で確認してください。
- 解約の条件 ― いつ、どういう手続きで、違約金はいくらか
- 成果物の定義 ― 何が納品されたら完了なのか
- 報酬の算定基準 ― 成功報酬なら「何をもって成功とするか」
- 担当者が誰か ― 提案に来た人と実際に担当する人が違うことがあります
これを嫌がる相手とは、契約しないほうが無難です。
まとめ
- まず無料の公的窓口を使ってください。 大分県よろず支援拠点は回数制限なしで無料、商工会議所・商工会は会員でなくても無料です
- 有料の専門家が必要なのは「実務を代行してもらう段階」からです。公的窓口は助言まではしますが、書類作成の代行はしません
- 事業者として結ぶ契約に、クーリング・オフは原則効きません。 解約条件・成果物・報酬基準・担当者の4点を、契約前に書面で確認してください
相談先を選ぶのは、相談する内容が決まってからで構いません。
まずは無料の窓口で課題を整理するところから始めてみてください。
そのうえで候補のひとつとしてご検討いただける場合、当事務所も初回相談は無料です。
各窓口の費用・回数・連絡先は時期によって変わります。
本記事は2026年10月時点の情報です。
利用の前に、必ず各機関の公式ページで最新の内容をご確認ください。
コメント