「下請け保護」を訴えるラジオCMに感じた違和感

納期交渉のイメージ画像

目次

「下請け保護」も大事ですが・・・

仕事柄というか地域柄というか、仕事中はもちろん休日においても、基本的な移動手段は自動車です。

移動中のBGMは「ラジオ」となることが多いのですが、最近のラジオCMでとても気になるものがあります。

それは中小企業庁か経済産業省がやっている「下請け企業保護」に関するCMです。

CMの内容

CMの舞台は発注元の大企業。登場人物は上司(多分、課長とか部長)と正義感あふれる若手社員です。

CMで交わされるやり取りは大体こんな感じです。

上司:「あの取引先は、取引し始めて長いから値段負けてもらえ~」

若手:「あの取引先は頑張っている業者さんだ。不当に買いたたくのはよくない!正当な対価を支払うべきだ!!」

「下請け企業保護」のために、不当に安い値段で買いたたくのはやめましょうというものです。

その言わんとするところわからんでもないですが、「ちょっと待てよ」とも思います。

下請けは「守る」だけでよいのか?

「不当な」価格で安く「買いたたく」のは良くないのはわかります。

「付き合いが長い」からというだけで安くしてもらうというのもおかしいでしょう。

でも仕入価格を下げて(コストカットして)、「少しでも安い値段で良いものを消費者へ届けたい」という想いはどこへとも思うのです。

上司の「付き合いが長いから~」という言葉の裏に、「付き合いが長いからあの会社の技術力はわかっている。これくらいまでならできるのでは」という考えがあるのなら、その若手社員君には取引先の技術力が見えていないということになります。

京セラも鍛えられて大きくなった

京セラの創業者・稲森和夫氏の講演集を読んでいて、松下電器からの価格引き下げ圧力が京セラを鍛えたという旨のお話がありました。

当時の京セラは松下電器に部品を納める業者のひとつでしたが、松下幸之助氏から値下げの厳しい要求があったようです。

稲森さんは「なんだこのくそジジイ」と思ったこともあるようですが、その厳しい要求にこたえることによって技術力が磨かれていき、京セラは大きく育っていきました。

制約があるから「創意工夫」が生まれる

中小企業は一般的に経営資源の面で大企業に劣ります。

だからこそというわけではないですが、「創意工夫」することによって、これまで世の中になかった製品を生み出したり、サービスを提供できるようになっているのではないでしょうか。

発注元からの厳しい条件提示を乗り越えることによって、技術力が磨かれ成長していくことができると思うのです。

両手で握手する画像

CMに欠けているもの

だからといって、「買いたたき」と呼ばれるような不当な取引を認めるわけではありません。

それこそ「正当な対価」を支払うべきでしょう。

ただ、「正当な対価」は誰が決めるのか、どうやって決めるのかは難しいとは思うのですが。

時間の限られたCMなので話を単純化しようとしている部分はあると思いますが、「より安く」「より良いものを」提供しようとする企業努力自体は否定すべきではないと思います。